NPBに入団する選手に支払われる契約金には、もともと「支度金」と言う意味合いと「礼金」という意味合いが併せてあった。

「支度金」とは、もともとは就職などの際に発生する転居費などの経費を雇用側が負担する金だ。文字通り、プロ入りするための「支度」に使ってくださいという金。プロ野球選手になるためのさまざまな準備に充てる金だ。育ててもらった両親に対する謝礼金なども含まれるだろう。
日本のプロ野球の契約金のもともとの趣旨は「支度金」だった。今も育成契約の選手には「支度金」と言う名目で、数百万円が支払われている。

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しかし多くのプロ野球選手の契約金には「礼金」というニュアンスも含まれている。育ててもらった大学、高校、さらにはボーイズ、リトルシニアなどの指導者に支払われる金だ。これは表立っては出てこないが、ほとんどの選手が「礼金」を支払っている。指導者も受け取るのが当然という認識の人が多い。直接、現金で支払う場合もあるが、野球用品などの「寄贈」の形をとる場合も多い。ボールやバットを母校やチームに「寄贈」するということだ。しかし、この「寄贈品」は、実際に使われるのではなく運動具店がすぐに買い戻す。指導者には運動具店から現金が入るという仕組みだ。
プロ野球で成功した選手の多くは、学校やチームにバックネットや野球用品、中にはマイクロバスなどを寄贈する。そうした純然たる「寄贈」も数多いが、それとは別の「寄贈」もあるのだ。
当然、こうした「礼金」は無税だ。税金の負担は選手にかかってくる。

「礼金」は、指導者だけでなく、選手の親戚や後援者など、入団の橋渡しをした仲介者に入ることも多い。昔は「礼金」を先にもらった仲介者が、選手に言うことを聞かせようとして猛烈にアタックすることもあった。違う球団から「礼金」をもらった仲介者同士がけんかをすることもあった。

さらに、表立っての「契約金」だけでなく「裏金」が発生することもある。2011年に巨人は、上原浩治、阿部慎之助ら有力選手の獲得をめぐって、巨額の裏金を支払っていたことが発覚した。また、高橋由伸の場合、巨人は父親の負債を肩代わりしたともいわれている。

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プロ野球の経営がどんぶり勘定でいい加減なのは、選手獲得に際して野放図な出費を放置していたことが大きい。高校野球の有力指導者は、選手がドラフト上位で指名されたらそれだけで家が建つともいわれた。アマチュア野球の指導者は「ボランティア」であると強調するが、実態は大きく異なっている。
この間、選手と球団の間に立ったスカウトの中にも、裏金を得ていた者がいるとも言われている。

大嶺翔太の契約金も、多くはこういう形で本人の懐に入ることなく消えていったものと思われる。

NPB各球団の経営は以前に比べれば健全になっている。新人獲得に際する金も、かなりクリアになっているようだ。しかし契約金の中から「礼金」を支払う慣習は今も続いている。

ちなみに独立リーグではNPBに指名された選手は、契約金の10%と、初年度の年俸の20%、2年目の年俸の10%を、出身独立リーグ球団に支払うことが明文化されている。それ以外の「礼金」はない。
実にクリアだが、それだけに独立リーグに選手が行くことを嫌う指導者もいるという。

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アマチュア野球とプロ野球の、どちらが腐っているのか、なかなか判断が難しいが、こういう旧弊な体質が、プロ野球の進化を遅らせているのは間違いないだろう。




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