昨夜はナゴヤドームで中日-巨人戦を見た。本当に素晴らしい試合だった。最終回には、応援の声をかき消すような大きな歓声が何度もおこった。「何て野球は面白いのだろう」と思った、
名古屋へ向かう電車の中で、ワールドカップのブログを書いて、ナゴヤドームからホテルへの帰路、ブログに対するコメントを読んだ。素晴らしいコメントがほとんどで、本当にありがたいと思った。
こういう議論がしたいと思っていたのだ。コメントを読んで自分の考えも、さらにはっきりした。

一つのたとえ話をする。
ある名物料理を出すレストランで、シェフが代わったとか、食材が十分に入らなかったとか、何らかの理由で、その料理の味が落ちたとする。
Aという客は「味が落ちた」と怒りを爆発させた。Bと言う客は「いろいろ事情があったんだろ、仕方ないよ」と味が落ちた料理をそのまま食べた。
その店にとって、本当に良い顧客はどちらだろうか?

私は文句なしにAの客が「上客」だと思う。作り手の事情を忖度せず、いつでも最高の料理を求める。そういう厳しい客は、料理人を育てるだろう。Bの客は、料理人を甘やかす。それに慣れた料理人は、いろいろ言い訳をして以後も手抜きをするかもしれない。

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お分かりだと思うが、これは、目の前でつまらない試合を見せられて「なんてつまらない試合をするんだ!」と怒る客と、「いろいろ事情があるんだよ」という客の、どちらが「上客」なのか、という問いかけでもある。

お金を払ってスタジアムで観戦する場合は当然だが、テレビやネットで試合を見る場合でも、我々は貴重な時間を割いて試合を観戦している。だから、その試合で満足することを欲している。
「満足」にはいろいろある。贔屓チームが勝てば満足と言う人もいるだろう。勝つだけでなく快勝しなくてはという人もいる。勝敗よりもいい試合が見たいという人もいるだろう。
しかし、誰もが願っているのは2時間なり、3時間なり、試合を観戦している時間が充実した、面白い時間であってほしいということだ。それなくして観客の満足はあり得ない。
例えば大相撲で、贔屓力士が「不戦勝」になったときに、高いお金を払ってきた客は「勝ったから」と満足するだろうか?
やはり、観戦するなら面白い試合が見たい。接戦ならうれしいが、ワンサイドゲームでも選手のいいプレーが見たいと思うのではないか。

一昨日の日本の試合は「勝利」もなく、ポーランドに失点をしたこともあり、川島の好セーブ以外にはあまり見どころもなかった。その上で試合終盤には両軍の戦意を失った姿を見せつけられたのだ。「決勝トーナメント進出」という大きな果実を手にしたのは喜ばしいが、それだけだった。本当に「いいお客」ならば、この試合に対してどんな評価を下すべきか、と言う話なのだ。

「グループリーグの状況を考えれば、やむを得ない選択だった」そうだろう。「こんなこと、サッカー界ではいくらでもあることだ」そうかもしれない。「ポーランドにさらに失点していたら、次はなかったんだよ」そのとおりだ。

しかし、それらの言辞は「みっともない試合をした」西野ジャパンの言い訳に過ぎない。チーム、選手がする「言い訳」を、お人よしのファンが頼まれもしないのに「代弁」しているに過ぎない。そういうあなたはどうだったのか?
私は、そういう「チームや選手への忖度」は、競技のためには良くないと思っている。

この試合は、単なるエキシビションマッチではなく、世界最高峰の舞台でのリーグ戦だった。だから「勝つ」「負ける」以外のいろいろな要素が絡まりあっていた。そうした試合の重大さ、複雑な要素を頭に入れて試合を見ることで、試合の興趣はさらに大きくなったのは事実だ。
しかし、そういう「試合以外のもの」がどこまで大きくなろうとも「試合そのもの」を凌駕することはあり得ない。目の前の試合の内容が乏しければ、それは「残念」なのではないか。

今、日本の「マニア」「ファン」の中には、贔屓チームや個人のことならなんでも応援しようとしている人がいる。何をしても賞賛するし、大喜びする。その結果として人気スポーツや芸能は「批評」「批判」がなくなり「礼賛」あるいは「信仰」の対象になろうとしている。
それはそのジャンル、対象の劣化を招く。批判、批評を忘れたファンは、対象の進歩、進化のためには役に立たない。

私はそういうのが大嫌いだ。素晴らしいプレーは素晴らしいというが、どんなに好きな選手でも、みっともないことをすれば、みっともないというし、それが続けば弊履のようにゴミ箱に捨ててしまうつもりだ。そうでありたいと思っている。最近のイチローについても、そんな感情が生まれつつあった。

これはあくまで私だけの考えだ。他の人に強制するわけではない。

今、西野ジャパンに声をかけるとすれば、
「次も試合を見ることができるのは喜ばしいが、あの試合は本当にみっともなかった。次は、勝っても負けてもいい試合を見せてくれ」というとだ。

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