地域での野球人気の衰退とともに、エクスパンションの大きな障壁になるのは、実は「プロ野球界」そのものだ。

NPBは野球協約で、新規球団の参加資格を以下のように定めている。

以下抜粋
第6章 参加資格
第27条 (発行済み資本の総額)
この組織に参加する球団は、発行済み資本総額1億円以上の、日本国の法律に基づく株式会社でなければならない。
第28条 (株主構成の届出と日本人以外の持株)
2 この協約により要求される発行済み資本の総額のうち、日本に国籍を有しないものの持株総計は資本総額の49パーセントを超えてはならない。
第36条の5 (新参加球団よりの預り保証金)
1 新たにこの組織の参加資格を取得した球団は、第31条に定める参加承認の日の翌日から30日以内に預り保証金として金25億円を機構に納入しなければならない。
第36条の7 (野球振興協力金)
第31条により新たに参加資格取得を承認された球団及び同条により球団又はその経営権を継承した法人若しくは個人は、それぞれ同条の承認の日の翌日から30日以内に金4億円の野球振興協力金を機構に納入しなければならない。
第36条の8 (加入手数料)
第31条により新たに参加資格の取得が承認された球団及び同条により球団又はその経営権を承継した法人若しくは個人は、それぞれ同条の承認の日の翌日から30日以内に金1億円の加入手数料を機構に納入しなければならない。


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つまり、NPBに参入する会社は外資系であってはならない。また、この規定では、複数の企業が球団を共同所有することもできない。
さらに、新規球団は預かり保証金(10年塩漬け)25億円、野球振興協力金4億円、加入手数料1億円の計30億円を用意しなければならない。

この上で、本拠地球場を整備し、選手や社員を獲得し、さまざまな施設を整備しなければならないのだ。選手の年俸を20億としても、80億円程度が当座、必要になるだろう。

ZOZOタウンは、今、儲かっているから問題はないかもしれないが、他にこういう条件を呑むような企業がどれだけでるのか、はなはだ疑問だ。

NPBの野球協約から見えるのは「新規参入されたら困る」という球団の本心だ。新球団ができれば「お客を取られる」と考えている。各球団は「保護地域」つまりフランチャイズをもっている。ここでの独占的な営業権が、ビジネスの基盤だ。近隣に新規球団ができれば、この営業権が侵害されるとも考えている。

そこには「NPB全体でマーケットを拡げていく」という発想が全くない。自分たちの利益だけを考え、それが脅かされるリスクをできるだけ排除したいと思っている。

しかし、今のNPBは、設定されたフランチャイズのごく小さなエリアの顧客を相手にし、リピーターを濃密に獲得することに血道をあげているが、他のエリアへのマーケティングは全く行っていない。

だから2500万人を超す巨大な観客を動員しながら、一方で野球に全く興味がない人々を大量に生み出し、野球に無関心な地域を全国に作ってしまっている。このために本拠地球場は満員札止めになるのに、同じ球団が地方で試合をすればがらがらというおかしな状況になっている。

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手つかずの野球空白地域をブルーオーシャンとみなし、新球団を設置して、新規開拓しなければ、プロ野球の将来性は非常に厳しい。しかし、そう思う経営者はほとんどいないのだ。

このあたり、無謀と言われながらもJリーグが全国にクラブを増やしていったのとまったく対照的だ。Jリーグは今、NPBの半分にも満たない900万人しか動員していないが、全国に38ものクラブがあり、地域に根差して若いファンを醸成している。その地を起点に、さまざまなマーケティングが可能だ。

NPBはいわば、穀倉地帯に居座って、収穫した農作物を居食いしているに過ぎない。球団はいつまでも恵みがあると思っているが、開拓しなければ先細りになるのは明らかだ。

NPBは、マーケットを拡げるために、野球協約の参入障壁を撤廃すべきだ。また外資や複数企業の共同所有も認めるべきだ。そうでなければ、観客動員がマイナスに転じた時に、打つ手がなくなってしまう。

それ以上に懸念するのは、NPBはひょっとしたらそういう難しいことは何も考えてなくて、単に「新しいことは何もしたくない」のかもしれないと思えることだ。
最近、各球団の野球振興の部署の人と良く話す。彼らは一生懸命取り組んでいるが、球団の上層部は危機感もなく、何も考えていないように見えるのだ。
「大企業病」が進行して、「儲かっているからいいじゃないか」と思う経営者しかいないのではないか。それが最大の懸念だ。




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