スポニチ
 第100回全国高校野球選手権大会で準優勝に輝いた金足農のエース・吉田輝星(17)に、新たな勲章が贈られる。地元の秋田県潟上(かたがみ)市が市民栄誉賞などの授与を検討していることが23日分かった。同市の表彰条例には「功労者表彰」しかなく、新たに条例を整備した上で栄えある“第1号”として甲子園での功績を称えたい考えだ。


これは本当に問題がある。

金足農が吉田と心中する気で甲子園の決勝まで行ったことは、確かに「壮挙」ではある。監督はともかく、吉田輝星本人を非難したり、責めたりする筋合いのものでは決してない。
強大な大阪桐蔭の打線の前に潰れるまで、彼のマウンドは健気ではあった。

しかし、野球というスポーツ、高校部活という教育の一環で見れば、たったひとりの投手に、地方大会から1500球もの球数を投げさせた金足農、中泉監督の選手起用には深刻な疑念がある。これは手放しで賞賛できる「偉業」ではない。

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第一に、この酷投は、吉田輝星の将来に、ほぼ確実に暗い影を落とす。故障などで投げられなくなる可能性もあるし、投げることができても、パフォーマンスが劣化する可能性もある。甲子園で800球も投げてその後も何ともない投手は皆無なのだ。
吉田は巨人に行きたいと言っている。プロ野球に行けば、高校野球とは比較にならない高い技術とパワー、能力が求められる。プロ入りすれば、さらにレベルの高い投手になるためにステップアップしなければならない。しかし、甲子園などで酷使された投手は、ほとんど伸びしろがない。平安の川口智哉、早実の斎藤佑樹、済美の安樂智大、興南の島袋洋奨、彼らはプロではほとんど活躍できないままだ。高校野球がピークになってしまって、その後の可能性まで先食いしてしまうのだ。
まだ18歳の彼に市民栄誉賞を与えて、その後の野球人生に過大な期待をかけるのは残酷すぎる。無用なプレッシャーが彼を押しつぶす可能性もあるだろう。

第二に、今回の金足農の「快挙」は、他の高校が真似をしてはいけない前例だ。彼らを表彰してしまえば、郷土の英雄に続く野球少年が出かねない。高野連の八田英二会長は「お手本」といったが、これを手本に玉砕戦法で甲子園に挑戦する無謀な学校が増えるのは、絶対に避けなければならない。投手という稀有の才能を持った人材を、たかが高校の部活で空費するのはあまりにも愚かだ。こういう例は、金足農を最後にしなければならない。

野球のことなどほとんど知らない、また野球の将来のことなどどうでもよい田舎の議会が、景気づけと人気取りで、金足農、吉田を神輿の上に上げようとしている。上がってしまえば、降りるときには地面にたたきつけられるような思いをすることになる。

アンジェイ・ワイダに『大理石の男』という作品がある。共産党支配下のポーランドで「労働英雄」に仕立てられ、銅像まで建てられた男がその後の人生を狂わせていく話がテーマになっている。
共産圏でもない日本で「野球英雄」をでっちあげ、一人の青年を偶像にしてしまうことの愚かさを我々は知るべきだ。

金足農がやったことは、是々非々でしっかり評価をし、今後の野球の発展のために活かしていくべきだ。もっと冷静で、客観的な考察が必要だ。

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