外国で活躍した日本人に対して、メディアが馬鹿な質問をしてレベルの低さを露呈するのは、お約束のようになっているが、今回は「日本人」というアイデンティティの問題も絡んでいたので、考えさせられることが多かった。

会見では、こういう質問があったという。
「インスタグラムにどんな写真を載せたいか」
「大事にしている日本語」「日本語をどう学んでいるのか」
「海外の報道で古い日本人像を考え直すきっかけになっているとあるんですが、ご自身のアイデンティティを含めてどのように受け止めているか」

SNSなどでは、テニスのことについて聞かないで、この手の質問をするのはどうか、という声が上がっている。大坂はテニスプレイヤーであり、テニスの大きな大会で優勝したから注目されているのだから、もっともな意見だ。

しかしメディア、特にテレビのワイドショーは、大坂がどんなプレーをしたかにはほとんど興味がない。ただただ「日本人が」ということだけに、注目している。

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全米オープンをセリーナ・ウィリアムスや他の選手が獲得したって洟も引っかけないが、「日本人がとった」ということだけで騒いでいるのだ。
これはオリンピックやワールドカップなどでもよく見られる「おらが国さの選手が活躍した」で騒ぐ日本人の習性が背景にある。競技そのものには興味がなくて、日本の国威発揚にだけ敏感に反応するのは、日本人が田舎者で、世界の動静に疎いからだと思うが、その習性をメディアがさらにあおっているのだ。

今回、メディアが大坂に迫ったのは
「日本人という"踏み絵"を踏め」ということだったと思う。
彼女は容貌も体格も日本人離れしているし、日本語も片言しか話せない。だからメディアや世間の多くの人は「日本人が勝った」と手放しで喜ぶのはやや抵抗がある。
だから
「お前は日本人だよな」「日本のことが好きだよな」「日本のことを学んでいるよな」
と迫っているのだ。

人種のるつぼと言われるアメリカから見れば、滑稽な話だろう。大坂は混血であって、どちらのアイデンティティも併せ持っている。そして、どちらにより愛着があるかは彼女自身の意思で決めることであり、日本がそれを強制することはできない。彼女は3歳からアメリカで育っているから日本よりもアメリカに親和性があるのは当然のことだ。それが日本人、日本メディアには我慢がならないのだろうが、日本人お得意の「同調圧」で彼女をなびかせることはできないだろう。

昨今は変な形で「愛国心」が高まっていることも背景にあるだろう。しかし「日本が」「日本が」と言い募ることで「本質」が見えなくなると言う部分は確かにある。
U18のように日本が負けたとたんに、決勝戦さえ中継しないようなメディアを見ていると「日本が」というのは一種の病気だと思う。

私も大谷翔平の活躍から目が離せないが、それは大谷が「二刀流」というMLBでも異能の才能であり、NPBから行った選手では初めて打者として一流の成績を残しつつある。この事実があるから注目しているのだ。「日本人」が先に立つわけではない。そしてMLBには大谷よりすごい選手はつねにたくさんいる。そのことも認識しなければならない。

我々がスポーツやアートを語るときは、日本以外のことも含めた事実関係をしっかり認識し、競技や他の国にリスペクトする必要があるだろう。
そうしないと「馬鹿なメディア」と同じくらい馬鹿だと思われる。


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