以前にも少し触れたが、全軟連は、公認軟式球を13年ぶりに改定する。



この間の改定もよく覚えているが、ディンプルの刻まれたボールから亀甲模様にボール表面が大きく変わってかなり違和感があった。今回は表明に複雑な凹凸が刻まれている。
それだけではなく、中学生、大人のM号は約3グラム、小学生のJ号は約1グラム重くなった。

これはこれまでの軟球



新しいボール



その理由として、全軟連の宗像豊巳・専務理事は、中学生の体格が大きくなり、軟式野球のプレーが変化したことを上げているという。

今の中学生の身長体重は、ここ10年、ほとんど変わっていない。昭和の時代と比べれば大きくなってはいるが、前の軟球の規格を変えた13年前から特筆すべき体格の変化はない。

この間、衰えたのは子どもの投擲能力だ。ソフトボール投げは、子供の世代が30年昔の親の世代よりも数字が落ちている。特に地方では、ソフトボール投げの記録が大幅に下落している。

このような状況で、軟球の重さを3gも重くするのは非常に問題がある。肩やひじを痛める例が増えるだろうし、うまく投げられない子供も増えるだろう。

さらに、新しい軟球はゴムの強度を高めて硬さが増した。硬式に似たバウンドとなるほか、変形を抑えて空気抵抗を減らしたことにより、打球が遠くへ飛ぶようになった。
「安全性の指標となる衝撃値は従来とほぼ同じだ」とのことだが、野球初心者にとっては、打球速度や距離が増大することは、恐怖感を与えるし、良いこととは思えない。

今回の軟式球の改定の主眼は軟球と硬球の違和感を小さくして、中学生が高校で硬式野球に入りやすくするためだという。この目的は今の「野球離れ」の対策としては、優先順位が高いとは思えない。
端的に言えば今回の改定は「今、軟式野球をやっている子供」のことしか考えていない。

今一番、大事なことは、軟球にも触れていない子供を、いかにして軟式野球に導入するかだろう。
昔は小学校高学年になれば、子どもはみんな軟球で野球をしたが、今、こういう子供を対象にしたベースボール型授業で扱っているのは、ソフトテニスボールのような柔らかいボールだ。軟球に触れる機会はないのだ。

そうした「ベースボール型授業」をやっている子を、軟式野球に進ませるためには柔らかいボールと軟球の「落差」を縮めるアプローチが必要なはずだが、今回は軟球が硬球に近づいたことにより、柔らかいボールとの「落差」が大きくなっている。
競技人口が激減しているのに、わざわざハードルを上げているのだ。ボールを買い替える親の負担も小さな話ではない。

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軟式野球は競技人口が激減している。「野球離れ」の影響もあるだろうが、全軟連のトップが、無能・暗愚で、問題のポイントがどこにあるか理解していないことも大きいと思う。

全軟連は、軟式の競技人口をもっと減らしたいとしか思えない。

硬式野球に進むようなシリアスな競技者は、この改定を喜ぶだろうが、これによって、軟式野球の衰退に拍車がかかる可能性は大いにあるだろう。


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