私はフリーのライターだが、"安田純平さんと同じだ"というのはおこがましい話だ。月と鼈ではあろう。

私は高校野球の部室に監禁されたことはないし、バットを持った監督や部長に「甲子園、最高でーすと言え」と強要されたこともない。打球こそ飛び交ってはいるが命の危険にさらされるような現場は全く知らない。ライターとしては古いが、野球のライターとしてはまだ駆け出しだし、大層な現場に立ちあったこともない。

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しかし、新聞、テレビなどの既存メディアとフリーランスの関係をある程度語ることはできる。
安田さんの「フリー」という立場は、今、絶対に必要になっている。
日本の場合、既存メディアの社員のほとんどは正社員だ。彼らには定額の給料が支払われ、就業規則に従って働くことが求められる。その範囲で国民の「知る権利」の代行者としての仕事をするのだ。
だから、過酷な現場、危険な現場には行くことができない。
ある国で紛争が起こると、まず既存メディアの特派員が引き上げる。残るのはフリーランスだ。現地で取材活動をするジャーナリストにはメディアを越えて連帯感ができる。既存メディアの記者たちは、残るフリーランスに生活必需品や機材などを置いていくこともある。できるだけの便宜を取り計らうこともある。

日本の既存メディアがフリーランスから記事を買うことはそれほど多くない。既存メディアは「自分たちこそが言論の担い手」という建前があるからそれを良しとしないのだ。だから日本のフリーランスは新聞、テレビ以外のメディア、雑誌やWEBなどに記事を販売する。また、自分たちでWEBメディアをもってニュースを発信することもある。

海外では、大手メディアも多くのフリーランスと契約しているから、フリーランスの記事が大手メディアに載ることも結構ある。

それに日本の既存メディアは今、政府やスポンサー企業などの制約で、十分にモノが言えなくなっている。広告を出している企業に不祥事があっても、それを十全に伝えることはしていない。
さらに日本に既存メディアは「記者クラブ」によって、後発メディアやフリーランスが取材の現場に入るのを拒んでいる。要するにカルテルを組んで、自分たちしかビジネスができないようにしているのだ。そして既存メディアはサンケイから朝日まで、みんなが同じ情報源からプレスリリースをもらって、コピペをして同じ情報を発信している。スクープや「落ち」がないように、みんなで手を組んでいるのだ。

そういう事実を既存メディアは認めていない。政府や企業にへこへこしているのにもかかわらず、あたかも、国民の味方であるかのようにふるまい、知っていることは全部伝えているかのような顔をしている。こういう状況こそ「メディアの腐敗」だと思う。

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日本国民は、あまりにも長い間そういう状況に飼いならされてしまったために、既存メディアの言うことこそ「真実だ」と思っている。いい学校を出て、高い競争力をかいくぐって新聞社やテレビ局に入った記者が書いているのだから、間違いがないと思っている。新聞やテレビをありがたがる人は非常に多い。
そういう人は、どこの馬の骨とも知らないフリーランスの言うことなど、信ずるに足りないと思っている。遊んでいるかのように思っている。

今回の安田純平さんに対するバッシングの何割かは「新聞記者でもないのに、勝手に危険なところへ行って何をやってるんだ」というフリーランスへの蔑視の感情が含まれているのだと思う。

これは今の日本人の民度の低さを象徴している。


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