丸のFAでの巨人移籍に関して、いろいろなコメントをもらった。ずいぶん見当がずれているものもあると思った。
ファンに対する裏切りがどうの、という話は問題外だ。FAはルールで決まっている。ドラフトで自身に選択権なくプロに入団した選手は、一定の年限一軍に登録されれば、すべての球団と事由に入団交渉をする権利=FA権を得る。これは、選手の権利であり、これを行使することに一点の問題もない。

ファンに対する裏切りと言うが、たまたま入ったチームで勝利に貢献した選手に対して、本当のファンであれば、感謝の言葉を述べることこそあれ「裏切者」などというはずもない。プロ野球選手は入団の時点で、そういう「約束」をしていたのだから。

引き留めるべき広島が巨人よりも低い提示額しか出さないことを批判する向きもあるようだが、各球団にはそれなりの経済事情がある。今いる選手とのバランスを失してまで高い提示をするのは良いこととは言えない。

maru-H


私が「残念だ」と言っているのは、ただ1点。巨人がFA選手を十分に活用したことがない球団ということだ。
2016年から巨人にいる陽岱鋼は、日本ハムのスピードスターだった。移籍後2年間は、成績不振にあえいでいる。けれどもそのポテンシャルを考えれば、来季も外野手のポジションを与えて活躍させるべきだと思う。
しかし、巨人はそうはしない。来季、ポジションが重なる丸をとったことで、陽は外野の他のポジションに行くしかないが。レギュラーの座は保証されていない。5年15億円の巨費を投じて取った陽は、巨人的には「過去の人」なのだ。年俸3億円の控え選手を作って平気なのだ。
丸は陽の倍以上の報酬が約束されているが、彼とても同じだ。1年、2年調子が悪ければ、次のFA選手にとってかわられる。巨人は巨費をどぶに捨てることに何のためらいもない。
巨人がどんな金の使い方をしようと知ったことではない。しかし巨人は、金だけでなく、有為の可能性のある選手の「キャリア」まで平気でどぶに捨てるのだ。
これは指導者や個別の経営者ではなく、巨人という球団の「特質」なのだ。

こういう選手起用は、他球団ではほとんどない。巨費を払って獲得した選手には、何とかして活躍してもらおうとする。1年、2年ダメでもなんどか「元を取ろう」とする。企業としてはそれが当たり前の姿勢だろう。

巨人だけがFAでおかしなことをするのは、企業の構造が他球団から全然違っているからだ。讀賣ジャイアンツという企業は、選手、職員の年俸を親会社の讀賣新聞社からもらって運営している。興行収入や放映権料などは、讀賣新聞スポーツ事業部に入る。巨人という企業は視聴率も観客動員も直截的には全く関係がない。巨人には「収支」「赤字」という概念がないのだ。
選手獲得の費用は、球団が新聞社におねだりをして出してもらう。讀賣新聞自体は痛いと思っているかもしれないが、巨人経営陣も指導者も痛くもなんともないのだ。だから、こんな無駄遣いを平気でする。

そして巨人は「身内」と「外様」の線引きをする。ヤクルトから日本ハムにFA移籍した稲葉篤紀はキャリアの終盤にはチームリーダーとして絶大な信頼があった。また横浜から移籍した内川聖一も、いまやソフトバンクの顔だ。
しかし巨人にFA移籍した選手はどこまでいっても「外様」だ。成績が落ちれば、石もて追われるのだ。チーム内で信頼を集めても、彼が身内同然になる可能性はほとんどない。末路は例外なく残念な結果に終わるのだ。

そのことは丸もよく知っていたはずだ。そうでありながら、この選択をしたことが残念でならないと言っているのだ。


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