これぐらいにしておこうと思ったのだが、高知商の問題とその背景について、きちんと整理をしておいたほうが良いと思った。しつこくて申し訳ない。
事件そのものは、高知商野球部が、高知市内で行われた同校ダンス同好会の有料のダンスイベントに、ユニフォーム姿で舞台に上がったというものだ。

これが「学生野球憲章」の「商業利用」に当たるのではないかということだ。形式的には、その可能性は確かにある。高校野球を無関係な「金儲け」に利用したと言われればそうだ。

川淵三郎さんや立川志らくなどの部外者が「だったら高校野球も入場料を取るな」というのは間違っている。「学生野球憲章」では、学生野球や青少年の健全育成に役立つ目的ならば有料のイベントも行ってよいと定めている。「それとこれとは別だ」ということだ。

しかし「学生野球憲章」に定める「商業利用」とは、高校野球選手が有料のイベントに出て報酬を得たり、企業や個人の宣伝に利用されたりするケースを想定している。
高知商のダンスイベントは形式上の「違反」に過ぎず、そこに問題性は全くなかった。

であるのに、高知新聞紙上でこの事実を知った高知県高野連が、高知商に連絡を入れ「憲章に抵触する恐れがある」と伝え、それを聞いた学校側が部長を謹慎処分にした。返す刀で高知県高野連は、この事実を日本高野連に報告。日本高野連は1月16日の定例会合で、高知商業高校硬式野球部部長を「有期の謹慎処分」とする処分案を決定した。これを2月1日の日本学生野球協会の審査室会議に上げ、処分を最終決定する。

この間に、高知県高野連にも日本高野連にも「この問題は、実質的に何も問題はないから、処分を決めずに口頭注意程度でとどめよう」という人間はいなかった。
一つには高知商の野球部長が、高知県高野連の意向を酌まない、彼らにとって気に入らない人物だったことが大きい。だから鬼の首を取ったように瑕疵をあげつらったわけだ。
もう一つは、日本高野連はこういう形式的な問題でもとがめだてするのが、もともと大好きな組織だったということだ。官僚主義というか、減点主義というか、人のミスを咎め立てする昔の高校野球の体質そのものなのだ。
さらに言えば、この問題が世間に明るみに出れば「自分たちの味方は一人もいなくなる」という認識もなかっただろう。公益財団法人日本高等学校野球連盟は、社会の公益に資するために存在する。社会のためになるとは言えない愚にも付かない決定をすれば、社会から存在意義を問われるはずだが、そういう認識もなかったのだ。

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高野連は、「高校野球の権威」としてあたかも法王庁のようにふるまってきた。背後には高校野球をここまで「商業利用」してきた新聞社の存在がある。そういう構造に守られて、唯我独尊の姿勢で凝り固まってきたために、こんな些細なことも適切に判断できなくなっている。

最終決定は高野連ではなく、上部組織の学生野球連盟が行うが、会長は高野連も学生野球連盟も八田正氏であり、基本的には一体化した組織だ。そこで、どのような判断をするか。
「おとがめなし」だけではなく、今後、同種のイベント参加は認可するとか、何らかの踏み込んだ判断を示してほしい。また高知県高野連の判断に対し、叱責するなどはっきりした態度を見せてほしい。

2月20日には新潟県高野連の「球数制限」の話も決定される。高野連は今、それなりに動揺していると言われるが「わからずやの権威主義者」「野球改革の抵抗勢力」として世間の憎悪の的になるのか、新たな改革の旗手となるか、大きな分岐点に立っていると言えるだろう。


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