サントリーのペットボトルの緑茶「伊右衛門」は、ネーミングが腑に落ちなかった。「なんでこんな名前を」と思っていた。
伊右衛門といえば、あなた田宮伊右衛門でしょうが。「四谷怪談」で妻のお岩を惨殺した挙句、幽霊になったお岩さんに呪い殺される人物でしょう。
なんでそんな名前を、とずっと思っていた。
京都、福寿園の創業者福井伊右衛門からとったそうだが、お岩・伊右衛門の怪談は人口に膾炙しているだろうに、と思っていた。

ただCMはよろしい。宮沢りえと本木雅弘は、実生活でも「花も実もあり、山も谷もあり」だった。嫁は戸板の前で裸になったり、相撲取りと浮名を流したりした。亭主は若いころは多くの女性に黄色い声を上げさせたが、つい最近、史上まれに見るアクの強い姑を見送ったばかりである。二人とも、今やすばらしい「大人」の佇まいである。変な京都弁もとりあえず許す。

この春は、二人が営む茶店の店先に、ある偉丈夫が立ったのである。少し蓄えたあごひげにも歳月を感じさせるその男の名は松坂大輔。
ここ二十数年、野球ファンを熱狂させた挙句海を渡り、栄光と挫折を経験して日本に戻り、昨年、何とか面目を施した38歳である。
生硬な受け答えも、尾羽打ち枯らした浪人の風情があってなかなかよろしい。
「去年なら、こんなCMあり得なかっただろう」
と思った刹那、画面は万朶の桜の下に変わって、松坂は同期の村田修一から励ましを受けるのだ。また村田の演技も学芸会風でなかなかよろしい。



突然涙が出そうになった。いつもドラマを見て泣いている奥さんに「やっすい涙やなあ」と言っている手前、そんな表情を見せるわけにはいかない。
亭主の沽券にかかわると、あわててトイレに立ったが、サントリーは昭和の野球ファンの琴線に触れることを、ぬけぬけとやってくれるものである。

ファンに腕を引っ張られた松坂だが、遅ればせでもいいからとにもかくにも美しいシーズンを迎えてほしいものだと思う。

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