星稜、習志野の試合以来問題化した「サイン盗み」については、取材を受けた高校野球指導者はほとんどが否定的なコメントをした。


ニッカン

札幌大谷・船尾隆広監督(47)「事実関係は分からないが、選手たちには誤解を招く動きはしないようにと、今日(29日)伝えた。」

龍谷大平安・原田英彦監督(58)「うちは(選手に、やるなと)言わなくても分かっている。高度な野球という意味では(サインが盗まれるとしたら)野球の質が下がっていると言えるかも知れない」

盛岡大付・関口清治監督(41)「うちは、もともとやらない。正々堂々、いつも真正面からぶつかるチームなので。ダメなものはダメ。」

山梨学院・吉田洸二監督(49)「(前日の騒動を初めて聞き)知らないことにコメントするのは当事者に対して失礼なので、すいません」

筑陽学園・江口祐司監督(56)「もし、私の知らないところで選手がやって勝ったとしても、選手は本当に喜べるのか。大人になった時、ああいうことをやったと心に残ってしまう」

明豊・川崎絢平監督(37)「二塁走者への指導としては、まずサイン盗みを絶対にしないことを徹底。またその紛らわしい行為をした選手は2度と試合には使わないことを伝えている」

九州の私立強豪校の監督「まず、してはダメと決まっていることをやることはおかしい。もし相手がやっているなと思っても、サインを変えるとか、何とかどうにかしようとするだけです」


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これらの意見は「ルールだから」「やっても自分の得にならないから」「後ろめたい行為だから」に大別される。
こういう形で指導者がきっぱり否定するのはよいことではあると思うが、誠に残念なのはなぜ「サイン盗み」が禁止されているのか、やってはいけないのか、に言及した指導者がいなかったことだ。

「サイン盗み」が禁止されているのは、「スポーツマンシップ」に反しているからだ。
「スポーツマンシップ」の定義もいろいろあるが、ウィキペディアには
「スポーツをすること自体を楽しみとし、公正なプレーを尊重し、相手の選手に対する尊敬や賞賛、同じスポーツを競技する仲間としての意識をもって行われる活動であるという姿勢」
とある。

ポイントは、「相手に対する尊敬や称賛」だ。スポーツにとって絶対に不可欠なこの部分に照らして、「サイン盗み」は、決定的にアウトなのだ。

そのことに言及する指導者が一人もいなかったのは本当に残念だ。

高名な高校野球ライターである安倍昌彦さんまでが
「サイン盗み経験者だからわかること。利は少なく損は多い、やめなさい」
と言っているのも残念だ。

みんな自分にとって何らかの意味で「損」だからやめようといっている。それは裏返せば「サイン盗みが何らかの意味で『得』になるのなら、やる」ということである。

本来、スポーツマンシップ、つまり精神性やモラルに照らして論議すべき「サイン盗み」を、損得論の次元でやっているのだ。「勝利至上主義」に毒されているとしか言いようがない。

そうではなくて、「サイン盗み」は、スポーツ、試合をするうえで絶対に必要な「対戦相手へのリスペクトがないから、ダメだ」という指導者が一人もいないことに、暗澹たる思いがする。

来年は、東京五輪がある。スポーツの本質に無理解な指導者ばかりで、大丈夫だろうかと思う。

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2016・18年松坂大輔、全登板成績

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