私は「タッチ」は読んでいなかった。ああいう少年漫画らしからぬ「さわやかなタッチ」には、なじまなかったからだ。

最近になって購入して読んでみたのだが、あの少女漫画風の軽いタッチにもかかわらず、そこで展開される野球は「昭和」そのものだ。
指導者の中には、タバコ片手に、ビールまで飲んで球児を指導する輩も出てくる。「300球投げ込み」を課す指導者も。そういうスパルタな指導者が、実は選手思いの素晴らしい指導者だった、みたいな話が肝だ。
「タッチ」でさえそうなのだ。他の多くの野球漫画は、みんな「しごきまくり、鍛えまくる」指導者こそが素晴らしいとなっている。
ちばあきおの「キャプテン」「プレイボール」には、指導者はほとんど出てこない。選手が自分で考え、努力するのが身上だが、それでも谷口は自分に過酷なノルマを課す。「適度な休養」などは出てこない。「勝つため」に人一倍努力をするのが偉いという考えに貫かれている。

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日本に野球が伝わって140年、それはスポーツが日本に伝来したのとほとんど同じ時間だが、日本人は「勝つため」に粉骨砕身努力するのがスポーツだと思ってきた。
間違っても「遊び」だと思われるようなことがあってはならない。心身をその競技に捧げるのがスポーツマンの使命だと思われてきた。

今、野球界で進めようとしている改革は、せんじ詰めれば、

・勝利至上主義の排除
・投手を中心とした選手の酷使をやめる
・上意下達の指導をやめる
・能力にかかわらず選手に出場機会を与える
・スポーツを楽しむことを主眼にする


ことを目指している。

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これ、今まで日本の野球界ではほとんど見られなかったことばかりである。そういう考えでのスポーツ指導は、ごく一部では行われていただろうが、ほとんどの人が見たこともない風景のはずだ。

野球の改革は今まで「なかったもの」を作ろうとしている、だから難しいのだ。

サッカーは、上記のような理念での改革が進んでいる。野球界には手本はほとんどないから、サッカーを手本にすべきなのだ。


2016・18年松坂大輔、全登板成績

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