日刊スポーツ
菅義偉官房長官は5日の記者会見で、米大リーグを引退した前マリナーズ・イチロー氏(45=本名鈴木一朗)から国民栄誉賞の受賞を辞退すると、代理人を通じて連絡があったと明かした。打診に対して「人生の幕を下ろした時に頂けるよう励みます」と返答があり、授与の検討を見送ることにした。
「イチロー氏」である。気持ちが悪くて仕方がない。引退したから鈴木一朗氏になるのかと思ったら、そうではないようだ。毎日新聞は「イチローさん」である。お地蔵さんみたいで、これもなれなれしい。

イチローはMLBで新人王、MVPをとった2001年と、MLB記録のシーズン262安打を打った2004年に2回、国民栄誉賞のオファーを受けている。いずれも小泉純一郎政権の時だ。
しかし「野球生活を終わった時に、もしいただけるのであれば、大変ありがたい」と固辞していた。

引退をしたのを待って、安倍政権から3度目のオファーをしたのだが、これも断った。

「時の権力のちょうちん持ち」をしたくないからと解釈することもできるだろうが、そう言うことではないように思う。

プロ野球の過去の国民栄誉賞受賞者は、王貞治、衣笠祥雄、長嶋茂雄、松井秀喜の4人。そもそも王貞治がハンク・アーロンの本塁打記録を抜いた時に、福田赳夫総理の発案でできた賞だから、プロ野球と深いかかわりがある。王と衣笠は記録達成時(衣笠は同時に引退時)、松井は引退時に与えられたが、長嶋茂雄は引退してから39年もたって、松井秀喜と同時受賞になった。
2013年の長嶋、松井同時受賞のセレモニーは、長嶋茂雄のお葬式みたいで、かなり気持ちが悪かった。
いずれにしても日本風のもったいぶった、重々しいセレモニーだ。イチローは、それが嫌だったのではないか。

引退後のインタビューで何度も言っているが、イチローは3月21日のラストゲームの後、自然発生的にできた東京ドームでの「ファンへのお別れ」が、本当にうれしかったようだ。イチローにとって「引退セレモニー」は、あれで十分だったのではないか。
「屋上屋を重ねる」ような、堅苦しいセレモニーはあのかけがえのない時間の後味を悪くするだけだと思ったのだろう。


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そういえば、もう一人、国民栄誉賞を辞退した野球人がいた。イチローの古巣のチームの大先輩、ポジションも同じ外野手の福本豊だ。「そんなえらい賞もろたら、立小便でけへんがな」と彼一流の言葉で断ったとされる。
今や国民栄誉賞をもらわなくても、立小便はコンプライアンス上アウトだが、福本も彼の感性に照らして国民栄誉賞を「格好悪い」と思ったのだろう。

イチローのあのセレモニーの現場に居合わせたことは、私の一生の宝物だ。イチローの判断に拍手を送りたい。


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