投手の健康について取材すると、たびたびこの話が出る。



「正しいフォームで投げることができれば、多い球数を投げても故障のリスクは低い」
これは「球数制限」についてよく知る専門家からも出てくる。自身も肘の故障に苦しめられた投手からも聞いた。
黒田博樹はドジャースのカーシヨウやヤンキースの若い投手に「怪我をしない投げ方」を伝授したといわれている。あちらの投手は刮目して教えを受けたという。

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野球ドクターからも「怪我をしない投げ方というのがあるんですよ」とも聞いた。
それらの意見は、一定の根拠があるし、実効性もあると思う。
小宮山悟をはじめ、実績を残した投手の中にも「正しいフォーム」を唱える人も多い。
槇原寛巳は、吉田輝星が投げまくっていた時に「彼は正しいフォームで投げているから、大丈夫ですよ」と言った。これはかなり軽いが。

しかし「正しいフォーム」は、「球数制限」の「対案」にはならない。「正しいフォーム」を導入すれば「いくら投げても大丈夫」とはならない。

まず「正しいフォーム」の定義が、人によって異なっている。多くの投手は自己流に「正しいフォーム」を編み出している。肩やひじに負担をかけないフォーム、ひじの腱を筋肉が守るように投げる投法、などいろいろあるが一つの定義にすることはできない。

また他の投手の「正しいフォーム」で投げたからと言って別の投手も「大丈夫」と断言することはできない。投手のフォームは個人差があり過ぎて、普遍的な定義にするのは難しい。

さらに「正しいフォーム」で投げれば故障しないというエビデンスもない。そもそも「正しいフォーム」の定義がないから、エビデンスもないわけだ。この程度で「対案」にすることはできない。

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もちろん「正しいフォーム」は、投手の健康を維持するうえで研究すべきだろう。故障やけがを防ぐ投法があるのなら、すべての投手がそれを身に着けるべきだ。
日本では「投球フォーム」の研究が昔から行われている。アメリカは個人主義の国であり、投球フォームは自分で編み出すものだ。投手コーチがフォームに口出しをすることはない。黒田博樹の教えにアメリカの投手は驚いたのはこのためだ。

「球数制限」は、良いフォームの投手も、そうでない投手も怪我のリスクを軽減するうえで必要だ。
それを導入したうえで「怪我をしない正しいフォーム」を確立させたうえで普及すべきだと思う。

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2016・18年松坂大輔、全登板成績

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