今、高校野球と健康被害について調べ物をしている。
日本高野連が選手の健康被害について問題視したのは、よく知られているように1991年夏、沖縄水産のエース、大野倫が大阪桐蔭との決勝戦まで一人でマウンドに立ち、773球を投げた挙句、右ひじをはく離骨折して投手を断念したのがきっかけだ。

当時の日本高野連、牧野直隆会長はこれを重要視し、これを契機として春、夏の甲子園の大会前には球児の肩ひじの検診を行うようになった。また試合中も整形外科医と理学療法士が待機するようになった。さらに準々決勝では勝ち残った選手の検診もするようになった。

こうした措置は、今から見れば不十分だ。端的に言えば「甲子園の2週間だけ怪我や故障をしなければそれでよし」というものだ。だからそれ以降も、斎藤佑樹の948球を筆頭に、大野倫以上に球数を投げる投手が出てきてしまった。

しかし、日本高野連が選手の健康面について28年前に問題意識を持っていたことは重視すべきだ。
問題は、メディアなのだ。
大野倫が敗れ去った91年夏の甲子園の講評で、朝日新聞の山本敏男は「ただ大野のひじ痛が完治しないまま終えたのは惜しかった。はつらつとしたプレ^で力を出し切った点を評価したい」と書いた。
そこには主催者として、甲子園の健康被害を懸念する意識は全くない。
以後、日本高野連が様々な対策を立てる中でも、メディアは当事者意識も、問題意識もないままに伝えているのだ。

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1994年春に日本高野連が、高校生の肩ひじを守るための指導用ビデオを作成して配布した時には、毎日新聞は「高校生投手の故障、これで完封」と能天気な記事を書いた。
高校野球の健康被害は、ビデオを1本渡して解決するような簡単な問題ではない。しかし朝日、毎日は深く立ち入ることなく、長い間看過してきたのだ。

新聞が投手の健康被害を正面から取り上げたのは、2013年春の安樂智大からだ。それも日本のメディアの問題提起ではなく、ESPNなどアメリカメディアが「異常な投球数」を取り上げ始めてからなのだ。

敢えて言うが、日本の高校野球、アマチュア野球が、ここまで世界基準とかけ離れた、野蛮で残酷なものになったのは、「新聞社の不作為」によるところが大きい。

朝日にも毎日にも問題意識を持った記者がいることは知っているが、新聞社の総意として「甲子園の健康被害を大事にしない」という力が働いていたのは間違いないだろう。

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