一昨年は、女子野球を追いかけていた時期がある。いろいろな人にお目にかかった。

「女のくせに野球をやるなんて」
という偏見の中で、野球に情熱を抱き続けた選手たちによって、女子野球は1世紀以上も命脈を保ってきた。
アメリカでも日本でも「女子野球」は、「見世物」「男子の野球のおまけ」のように扱われてきたが、そんな中で、競技としての女子野球を確立させたのは、男子の中に交じって、試合に出られない環境に耐えながら野球を続けてきた女子選手たちだ。彼女たちが指導者になって、高校や大学に女子野球部を創設し、競技人口を広げてきた。

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10年前にできた女子プロ野球は、そうした女子選手のステップ、目標として一定の役割を果たしてきた。

女子野球は今、ちょっとしたブームを迎えている。甲子園やプロ野球にあこがれる女子が、自分たちでも野球をやろうとこころざし、野球部の門をたたいている。ソフトボールの経験者が多いが、最初から「野球だけ」という人も多い。

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これまでの女子野球は、女子選手上がりの指導者が中心で営まれてきた。男子とは異なり、軍隊式の上下関係ではなく、先輩後輩が対等に話をする「同志的結合」によって、チームは運営されてきた。
監督が選手を選抜すると、選から漏れたことが納得できない選手が、監督室に直談判する様な文化、先輩の投球フォームを後輩がチェックする様な文化が根付いていた。

つまり「絶対的な上下関係」という日本野球の最も醜悪な部分、最も恥ずかしい部分が取り除かれた形で、女子野球は発展してきたのだ。

しかし、女子野球に小さなブームが起きるとともに、学校側が「生徒集め」の道具として、女子野球を利用するようになった。そして、男子野球の指導者をコンバートするようになった。
男子の指導者は女子野球の文化を「手ぬるい」と断じ、「こんなのではいつまでたっても勝てない」と決めつけて「勝利至上主義」的で、非科学的な「根性野球」を女子野球に導入しようとしている。
当然、厳しい上下関係を強いて、体制を引き締めている。

つまり、日本の男子野球の最もダメなところを女子にも移植しようとしているのだ。
その結果として、投手の酷使が生まれている。エリート主義によって試合に出ない選手も生み出されている。
さらには、絶対的な上下関係をよいことに、パワハラやセクハラも生まれている。
今の時代では「百害ある」男子野球が、女子を侵食しているのだ。

この状況が進展すれば、せっかくの女子野球ブームも下火になるだろう。野球に興味を持つ女性が「野球は怖い」と言い出さないうちに、「勝つこと」しか求めない、古くて頭の固い指導者を排除する必要があるだろう。

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東京球場・シーズン最多本塁打打者/1962~1972

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