Number Web 2004年3月15日から
 また、昔の選手は、長嶋や王や野村克也がそうだったように、ホームランを打ってもガッツポーズなどはしなかった。むろん、ベンチにいる選手が全員で立ち上がって彼らを出迎えるというようなこともしなかった。彼らにとってホームランを打つのはあたりまえのことで、特別のことでもなんでもなかったからである。また、これみよがしのガッツポーズをするのは、ホームランで打ちのめされているピッチャーをさらに打ちのめすことでもある。

 しかし、いまの選手は、年に1本か2本しか打たない選手ならともかく、30本も40本も打つ選手でもガッツポーズをする。彼らは2億も3億ももらっているのだから、ホームランを打つのはあたりまえの仕事のうちなのである。あたりまえの仕事をしただけなのに何がうれしいのかと思うが、彼らはあたりまえの仕事を誇って恥ずかしいとは思わないのである。あれを見ていると、ぼくはいつも頭のわるいガキ大将を思い出す。
 当然のことながら、昔は選手のテーマ曲などという子供じみたものもなかった。しかしいまは何がいいのか、選手ごとにそれらが決まっていて、打席にはいるごとに球場に流れるのである。
 ジャイアンツの堀内監督は、ジャイアンツの選手にはそれらを禁じるらしい。
 選手のテーマ曲については、
「野球は歌謡番組じゃねえんだ」
 といっている。


平成この方、私は海老沢さんの文章を理想とし、その考え方を範として文章を書いてきた。10年前に亡くなられたからお目にかかることはなかったが、私の文章が目に留まらなくてよかったという気もしている。

15年前、海老沢さんはガッツポーズをこういう風に切って捨てていた。おそらく海老沢さんはスポーツマンシップについて理解しておられたと思うが、それ以前に、海老沢さんの真理へ向けて透徹した視線で見れば、そういう見解になるのだろう。

私が言うのもおこがましいが、見事な見解だと思う。

この文章は、海老沢さんの最後の本となった「プロ野球が殺される」に収められている。球界再編に向けて揺れるプロ野球界に、海老沢さんは何度も失望しながらも希望を見出そうとしていた。

2009年、亡くなった年のWBCでは、MLB側が「球数制限」にこだわったことを「本気を出していない」と怒っておられた。
「球数制限」が日本で意識されるようになったのは、WBCが初めてなのだ。

そこから日本人の意識は大きく変化したが、今、海老沢さんが存命ならどんな感慨を持ったのか、知りたかったと思う。今年でもまだ69歳。本当に惜しかったと思う。

野球とは関係ないが、私が「生涯1冊の本を選べ」と言われれば、海老沢さんのこの本を選ぶ。



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東京球場・シーズン最多本塁打打者/1962~1972

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