10分もある大きな特集だった。しかし、テレビというメディアは、議論を深めるには全く不向きだというのを露呈した。
内容をすべて書き起こした。
竹内由恵;夏の甲子園を目指す戦いが始まりました。そんな中、あるルールの導入が議論になっています。「球数制限」です。
去年の夏、吉田輝星投手の活躍が話題になりましたが、一方で881球を投げたことがきっかけで「球数制限」の議論になったんですね。そんな中、日本高野連の「有識者会議」でこんな案が出されたんです。「1試合の球数制限ではなく、大会期間中の球数制限」
これを来年までに導入することを目標にするということなんですね。
それにしても、高校生だけじゃなくて小学生、中学生と野球をするすべての子をケガから守るには?様々な意見を集めました。
(中学1年生で右ひじの手術を受ける子供)
球児;小学校6年生の最後の方にだんだん痛くなってきて、力入れて投げると痛くなって
ナレーション;慶友整形外科病院では年間800人を超える野球選手が受診しますが、そのほとんどが高校生以下です。
記者;これからも野球を続けたい?
球児;はい、プロ野球入って誰にも文句言われない選手になりたいです
【桑田真澄】
ナレーション;子供たちを守るため、球数制限が必要だとするのは、桑田真澄さん
桑田;僕は大賛成ですね。100球は越えちゃいけないと思います。真夏の炎天下の下で、良く壊れなかったと思います。僕は本当に運が良かったと思います。
ナレーション;桑田さんが球数制限に賛成する背景には、アメリカでの経験がありました。
桑田;アメリカはメジャーリーグの選手もアマチュアの選手も、すべて球数制限をすることで体を守っています。
いろんな角度から勉強したんですけど、選手を守るには球数制限が最も効果的なんです。
球数制限というルールを作って子供たちの投げすぎを止めるということに、取り組んでいくべきだと思いますね。
ナレーション;桑田さんは、たとえ、球数制限を導入しても、甲子園の魅力は変わらないといいます。
桑田;彼らのあの白球を追いかける姿を見てあげてくださいよ。球数制限をしても、絶対感動すると思いますよ。
【高校野球の名将】
ナレーション;一方で、高校野球の名将は課題を口にします。智辯和歌山の高嶋仁前監督は
高嶋;うちなんかは5,6人ピッチャーをそろえています。どうってことないですけど、公立高校だったら1人しかいないということになると、その球数に達したら次のピッチャーがいないということはもう負けということじゃないですか。それはちょっと不公平が出るんじゃないか。
ナレーション;同じく現場の声を代弁するのは横浜高校の渡辺元智前監督
渡辺;(人数不足で)新入生が入ってくるのを待って試合ができるような、そんなチームが結構あるんです。その子たちにも野球をやらせたいので、そこで100球という限定を今してしまったら、そのチームは野球ができなくなる。そういうために、少し猶予期間が欲しいなということですね。
【福岡県高野連】
ナレーション;ともに投手の人数によってチームに格差が生まれてしまうと懸念します。
さらにこんなデータがあります。この春、福岡県高野連が球数制限について高校球児に行ったアンケートでは87%が球数制限に反対。
後悔することなく試合をしたいという球児たちの思いが試合に現れています。
【古島弘三医師】
ナレーション;では、医学的にはどうなのでしょうか?これまでに8000人以上の野球選手を診察してきた(慶友整形外科病院の)古島弘三医師は小中学生のメディカルチェックを行う中で、傾向があるといいます。
古島;いつも70球以下しか投げませんという子と、100球以上投げていますという子、70~100球以上の間、という子を比べると、ひじの痛める率が70球以上からどんどん高くなっています。100球以上だと50%を超えて60%近くがひじ痛めたことあるって言ってますね。そういうのを見ても、投球数の制限は守る意義が相当あります。
ナレーション;投球数が多いほどケガのリスクが高まるという古島医師。球数制限導入の影響は、高校球児に限ったことではないといいます。
古島;高校で球数制限をする意義は、その下のカテゴリーでもすべきというお手本になってくれることを期待しているんです。
そういうビジョンが出れば、小中もやらざるを得ないことになるでしょうから。大きな一歩になると思います。
【大野倫】
ナレーション;そんな中違ったアプローチがあるのではないかと話してくれた人がいます。
大野倫さん。沖縄水産のエースだった28年前の夏、右ひじを痛めながら773球を一人で投げぬきました。チームは準優勝でしたが、大会後に右ひじの疲労骨折が発覚し、二度とマウンドには戻れませんでした。
今、大野さんは地元の中学生チームの監督を務めています。
その立場から、
大野;球数制限すると、2ストライク追い込んだら3球勝負しないといけなくなる。ボール球で誘うとか、1回見せ球を使ってとか、そういうピッチングがなくなっちゃう。
ナレーション;いかにこれまでの野球を変えずに、ケガから選手を守るか大野さんはこう考えます。
大野;イニング制限の方が次の作戦も立てやすいし、ピッチャーもそんなに今までと違う配球をしなくてもそのまま野球を継承できるのかな、というのはありますよね。そういうルールがあれば、ピッチャーの故障は減ってくるでしょうし、僕もケガしないで甲子園で投げら他かもしれないですし。たった一人のスーパーエースで勝って、スーパーエースをつぶしてしまったらね。
スタジオ
竹内;本当に難しい問題だと思いますが、川上憲伸さんはどう思いますか
川上;私たち大人が未来のある生徒を守るのは素晴らしいことだと思いますね。
竹内;一方で球児たちは複雑な思いがあるようですが。
川上;確かに完全燃焼したい高校球児にとっては、最後まで投げたいという気持ちがあるのかもしれませんね。
竹内;今回、有識者会議で1試合ではなくて大会期間中の球数制限という案が出ましたが、これについてはどう思いますか
川上;ケガって試合だけではなくて練習から気を付ける必要があって、選手、指導者が密な関係でコンディションが悪い時はそうだんして、近くのお医者さんにメディカルチェックを受けに行く。そういったことを増やすことで、ケガが減っていくと思うんですよね。
それと、小学生、中学生は絶対球数制限すべきだと思います。まだ骨が固まっていないと思うので。
富川悠太;小学生、中学生が球数制限をすれば、子供たちでどんどん試合で投げられる投手が増えるわけだから、そのまま育ってくると、高校野球でそんなスーパーエースに頼らないで、もっといい投手が出てくるという可能性もあるんじゃないかと思いますね。長い目でみると、小学生、中学生が球数制限するのは必要だと思います。
徳永有美;高校球児たちが試合に全て捧げて勝ちたいという瞬間があると思いますが、大事なのは自分の体を知ったり、大人がちゃんと見てあげたりするとか、密なコミュニケーションが大事。
川上;そういう風に野球が変わってくると思います。常に痛いときは話し合える相談相手がいることが必要ですね。青春時代は戻ってきませんからね。
この問題の、ほんのとば口の部分をちょっと撫ぜてみた、という程度で終わった。この程度しかできないのだろう。
守旧派の「高校野球の名将」は、ここまで有識者会議が進んでも、同じことを言っている。おそらく議論の内容が十分に理解できていないのだと思われる。
古島医師が言いたかったことは、もっと他にあったと思うが、不完全燃焼の感じだ。
大野倫は、明日、私の取材記事が「東洋経済オンライン」に載る。5月に沖縄で話を言いたが、が、この人が「球数制限」についてどんな考えでいるのかは、よくわからなかった。
ただ、今野球の底辺拡大に一人で立ち上がっている。このことは応援したい。
「大会中の球数総数の制限」というのは、「球数制限」の議論を骨抜きにしてしまう可能性が高い。注意しつつ経緯を見守りたい。
えっ!もう降板!!2|1回未満の先発投手2002~2019・球数多い順
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!
↓
好評発売中!
竹内由恵;夏の甲子園を目指す戦いが始まりました。そんな中、あるルールの導入が議論になっています。「球数制限」です。
去年の夏、吉田輝星投手の活躍が話題になりましたが、一方で881球を投げたことがきっかけで「球数制限」の議論になったんですね。そんな中、日本高野連の「有識者会議」でこんな案が出されたんです。「1試合の球数制限ではなく、大会期間中の球数制限」
これを来年までに導入することを目標にするということなんですね。
それにしても、高校生だけじゃなくて小学生、中学生と野球をするすべての子をケガから守るには?様々な意見を集めました。
(中学1年生で右ひじの手術を受ける子供)
球児;小学校6年生の最後の方にだんだん痛くなってきて、力入れて投げると痛くなって
ナレーション;慶友整形外科病院では年間800人を超える野球選手が受診しますが、そのほとんどが高校生以下です。
記者;これからも野球を続けたい?
球児;はい、プロ野球入って誰にも文句言われない選手になりたいです
【桑田真澄】
ナレーション;子供たちを守るため、球数制限が必要だとするのは、桑田真澄さん
桑田;僕は大賛成ですね。100球は越えちゃいけないと思います。真夏の炎天下の下で、良く壊れなかったと思います。僕は本当に運が良かったと思います。
ナレーション;桑田さんが球数制限に賛成する背景には、アメリカでの経験がありました。
桑田;アメリカはメジャーリーグの選手もアマチュアの選手も、すべて球数制限をすることで体を守っています。
いろんな角度から勉強したんですけど、選手を守るには球数制限が最も効果的なんです。
球数制限というルールを作って子供たちの投げすぎを止めるということに、取り組んでいくべきだと思いますね。
ナレーション;桑田さんは、たとえ、球数制限を導入しても、甲子園の魅力は変わらないといいます。
桑田;彼らのあの白球を追いかける姿を見てあげてくださいよ。球数制限をしても、絶対感動すると思いますよ。
【高校野球の名将】
ナレーション;一方で、高校野球の名将は課題を口にします。智辯和歌山の高嶋仁前監督は
高嶋;うちなんかは5,6人ピッチャーをそろえています。どうってことないですけど、公立高校だったら1人しかいないということになると、その球数に達したら次のピッチャーがいないということはもう負けということじゃないですか。それはちょっと不公平が出るんじゃないか。
ナレーション;同じく現場の声を代弁するのは横浜高校の渡辺元智前監督
渡辺;(人数不足で)新入生が入ってくるのを待って試合ができるような、そんなチームが結構あるんです。その子たちにも野球をやらせたいので、そこで100球という限定を今してしまったら、そのチームは野球ができなくなる。そういうために、少し猶予期間が欲しいなということですね。
【福岡県高野連】
ナレーション;ともに投手の人数によってチームに格差が生まれてしまうと懸念します。
さらにこんなデータがあります。この春、福岡県高野連が球数制限について高校球児に行ったアンケートでは87%が球数制限に反対。
後悔することなく試合をしたいという球児たちの思いが試合に現れています。
【古島弘三医師】
ナレーション;では、医学的にはどうなのでしょうか?これまでに8000人以上の野球選手を診察してきた(慶友整形外科病院の)古島弘三医師は小中学生のメディカルチェックを行う中で、傾向があるといいます。
古島;いつも70球以下しか投げませんという子と、100球以上投げていますという子、70~100球以上の間、という子を比べると、ひじの痛める率が70球以上からどんどん高くなっています。100球以上だと50%を超えて60%近くがひじ痛めたことあるって言ってますね。そういうのを見ても、投球数の制限は守る意義が相当あります。
ナレーション;投球数が多いほどケガのリスクが高まるという古島医師。球数制限導入の影響は、高校球児に限ったことではないといいます。
古島;高校で球数制限をする意義は、その下のカテゴリーでもすべきというお手本になってくれることを期待しているんです。
そういうビジョンが出れば、小中もやらざるを得ないことになるでしょうから。大きな一歩になると思います。
【大野倫】
ナレーション;そんな中違ったアプローチがあるのではないかと話してくれた人がいます。
大野倫さん。沖縄水産のエースだった28年前の夏、右ひじを痛めながら773球を一人で投げぬきました。チームは準優勝でしたが、大会後に右ひじの疲労骨折が発覚し、二度とマウンドには戻れませんでした。
今、大野さんは地元の中学生チームの監督を務めています。
その立場から、
大野;球数制限すると、2ストライク追い込んだら3球勝負しないといけなくなる。ボール球で誘うとか、1回見せ球を使ってとか、そういうピッチングがなくなっちゃう。
ナレーション;いかにこれまでの野球を変えずに、ケガから選手を守るか大野さんはこう考えます。
大野;イニング制限の方が次の作戦も立てやすいし、ピッチャーもそんなに今までと違う配球をしなくてもそのまま野球を継承できるのかな、というのはありますよね。そういうルールがあれば、ピッチャーの故障は減ってくるでしょうし、僕もケガしないで甲子園で投げら他かもしれないですし。たった一人のスーパーエースで勝って、スーパーエースをつぶしてしまったらね。
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竹内;本当に難しい問題だと思いますが、川上憲伸さんはどう思いますか
川上;私たち大人が未来のある生徒を守るのは素晴らしいことだと思いますね。
竹内;一方で球児たちは複雑な思いがあるようですが。
川上;確かに完全燃焼したい高校球児にとっては、最後まで投げたいという気持ちがあるのかもしれませんね。
竹内;今回、有識者会議で1試合ではなくて大会期間中の球数制限という案が出ましたが、これについてはどう思いますか
川上;ケガって試合だけではなくて練習から気を付ける必要があって、選手、指導者が密な関係でコンディションが悪い時はそうだんして、近くのお医者さんにメディカルチェックを受けに行く。そういったことを増やすことで、ケガが減っていくと思うんですよね。
それと、小学生、中学生は絶対球数制限すべきだと思います。まだ骨が固まっていないと思うので。
富川悠太;小学生、中学生が球数制限をすれば、子供たちでどんどん試合で投げられる投手が増えるわけだから、そのまま育ってくると、高校野球でそんなスーパーエースに頼らないで、もっといい投手が出てくるという可能性もあるんじゃないかと思いますね。長い目でみると、小学生、中学生が球数制限するのは必要だと思います。
徳永有美;高校球児たちが試合に全て捧げて勝ちたいという瞬間があると思いますが、大事なのは自分の体を知ったり、大人がちゃんと見てあげたりするとか、密なコミュニケーションが大事。
川上;そういう風に野球が変わってくると思います。常に痛いときは話し合える相談相手がいることが必要ですね。青春時代は戻ってきませんからね。
この問題の、ほんのとば口の部分をちょっと撫ぜてみた、という程度で終わった。この程度しかできないのだろう。
守旧派の「高校野球の名将」は、ここまで有識者会議が進んでも、同じことを言っている。おそらく議論の内容が十分に理解できていないのだと思われる。
古島医師が言いたかったことは、もっと他にあったと思うが、不完全燃焼の感じだ。
大野倫は、明日、私の取材記事が「東洋経済オンライン」に載る。5月に沖縄で話を言いたが、が、この人が「球数制限」についてどんな考えでいるのかは、よくわからなかった。
ただ、今野球の底辺拡大に一人で立ち上がっている。このことは応援したい。
「大会中の球数総数の制限」というのは、「球数制限」の議論を骨抜きにしてしまう可能性が高い。注意しつつ経緯を見守りたい。
えっ!もう降板!!2|1回未満の先発投手2002~2019・球数多い順
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やはり問題は、前提が共有できていないことだと感じます。高野連や"名将"諸氏には、これまでの「高校野球文化」を守るという前提があり、その根幹である勝利至上主義や、「全てを賭け、燃え尽きる」有り様を変容させる球数制限に強い抵抗があるのでしょう。
しかし一方で、彼らが言い訳に使う公立高校では、「健康を守る」「スポーツを楽しむ」という前提が思いの外急速に広まっていると聞きます。
「高校野球文化」の司祭たちは、そうした健全なスポーツ文化を"別物"と見て来た様に思います。彼らはそんな"余所者"の容喙が気に入らず、運用で緩やかに球数を減らそうと思っているのでしょうが、ルールとして、試合単位での制限(更には連投制限)を導入しなければ肩肘の健康に寄与しないことは明らかです。
仮に、風物詩としての甲子園、極限状態が生み出す"感動"が(高校)野球人気を下支えしているとしたら、それは不健全であり、いずれプレーヤーは消えます。
この問題にはスポーツ庁長官も理解がある様ですから、日本の野球文化の再定義が一息に進み、できれば今夏から制限を導入して欲しいと思います。
失礼しました。
baseballstats
がしました