フルカウント 斎藤佑樹
高校野球変革へ―日ハム斎藤佑が高校球児アンケートを提案「後悔のない野球人生を送って欲しい」

この話は悩ましい。
高校野球の「球数制限」について、現場の声を聴くべきだというのは、多くの野球関係者、とりわけ今の高校野球を1ミリもかえたくない関係者が主張することだ。

アンケートというのは「子供のために大人がしっかり判断すべきだ」というそもそも論からしておかしい。責任放棄だ。しかし問題があるのはそれだけではない。

今春の選抜の監督も過半数が「球数制限は必要ない」と言った。私は昨年、高知で阪長友仁さんの講演を聞いたが、そのときも高知ファイティングドッグズの選手、指導者のほぼ全員が「球数制限反対」だった。なかでも吉田豊彦コーチは強硬に反対していた。
高校生にアンケートを実施すれば、おそらく過半数を大きく超えて「球数制限反対」の声が集まるだろう。
しかし「球数制限推進派」のイベントで、挙手で「球数制限」について聞いたところ、過半数が「あったほうが良い」だった。

IMG_6835


一つには、野球選手や関係者がこの問題をしっかり考えていないというのがあろう。
また野球選手は、自分の意見をはっきり言うのが苦手だ。周りを見渡して、多数につこうとする傾向がある。「球数制限推進派」の主催イベントでは、それを忖度して「あったほうが良い」に手を挙げた可能性もあると思う。
実態としては今の高校球児は「球数制限」とは何なのか。それは自分にとってどういう意味があるのかをよく知らず、深く考えていないということではないか。

斎藤佑樹が言うように、全国の高校生にアンケートを取るのなら、その前に今、日本の高校野球はどういう状況にあるのか、「球数制限」をめぐってどんな問題が起きているのか、を医療面なども含めしっかり説明する必要があろう。
そのうえで、挙手にすれば「お前、賛成に手を挙げたりしないよな」などと同調圧のしめつけを受ける可能性があるから、無記名のアンケートにすべきだ。そのとりまとめは、監督を経由しない方がいい。

新潟県は10年以上前から、野球少年の健康問題について小中高で情報共有をしていた。新潟の子供は「野球手帳」という小冊子に、小さいころからの野球ひじなどの治療履歴をかいてきた。そういう子供が高校生になれば、自分の肩ひじがどうなっているかをはっきりと理解している。
昨年12月に新潟県高野連が「球数制限」導入を決めた背景には、新潟県内の小中校の指導者の60%以上がアンケートで「球数制限があったほうが良い」と答えたことがあった。彼らは、本当にこの問題を理解して判断したといえるだろう。

斎藤佑樹がたびたびこの手のコメントをするのは自身が「甲子園で史上最多の948球を投げて壊れてしまったから、プロで活躍できなかった」という因果関係を否定したいからだろう。彼は「英雄」であって「犠牲者」ではないと思いたいのだ。
「後悔のない野球人生を送ってほしい」という言葉は「自分は後悔していませんよ」ということなのだろう。

この問題は「ことの本質は何か」を深く考えずに騒ぎ立てる今の「日本」を象徴している。
まだまだ解決へ向けた道のりは遠そうだ。


王貞治・選手別アベック本塁打数

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!