エースに多くの球を投げさせるべきだ、という指導者、関係者だって「怪我、故障のリスクがある」ことは承知している。しかし、それでも投げさせるべきだ、と考えている。

1.(多くの球数を)投げさせることのメリットは何か?
 指導者
 ・エースが投げることで勝利の可能性が大きくなる
 ・勝利に向けて最善の努力をしているとみなされる
  (投げさせないと、なぜエースを出さないといわれる)
 投手本人
 ・投げたい気持ちが満たされる
 ・苦しい状況を克服することで「根性」がつく
 ・好投すれば注目度が上がり、大学、プロの道が開ける

2.デメリットは何か?
 指導者
 ・(その投手が故障をしたときに責任を問われる)
 ・「投手の酷使」という社会的非難を浴びる
 投手本人
 ・故障によって選手生命を断念したり、パフォーマンスが低下する恐れがある


結局、日本の場合、メリットとデメリットを差引すれば、投げさせるメリットが大きい。
ポイントは、()付のデメリットだ。アメリカであれば投手を酷使した指導者は、故障すれば親や本人から訴えられる。また「虐待」で通報される可能性もある。
韓国でも、投手を酷使した監督が、親から「国家人権委員会」に通報された事例がある。

IMG_9214


日本はなぜか「酷使した監督」が、故障やパフォーマンス低下の責任を問われないのだ。

一つは、指導者や親のインテリジェンスが低すぎて「投げすぎと故障の因果関係が理解できない」ことがあろう。多くの医師は、野球指導者にメディカルの説明をすることに、絶望的な思いを抱いている。医師の言っていることが「理解できない」指導者が多いのだ。講習会を開いても、居眠りをしている指導者もいる。

もう一つは「甲子園」という、たかが高校の「部活の全国大会」が、巨大になり過ぎて「ここで投げることができれば、故障しても本望」と思う選手や指導者、親がいるということだ。
特攻隊に息子の命を取られた親が、その報を受けて「うれし涙でございます」と言ったという話があるが、これに近い「狂気」じみた感情が存在するということだ。

私はこの議論に、未熟な高校生の「気持ち」「意思」を持ち出すのは、立派な成人のすることではないと思う。それは大人の責任放棄だろう。


私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!