私はNumberとか東洋経済オンラインとかいろんなメディアに書かせていただいている。当然、このメディアには異なる意見の記事も掲載される。それに目くじらを立てる必要はないが、Number Webにこれはどうか、という記事が載った。
甲子園、高野連は悪者なのか。米・高校野球事情を調べてみると……。

太田俊明という人は、昔、坂本光一という名前で書いていたミステリー作家だ。甲子園を題材にした作品もある。

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甲子園を擁護する論調で書いている。言いたいのは

このところ、日本野球は、世界の野球先進国で唯一球数制限のないガラパゴスと揶揄されているが、「甲子園というシステム」が、100年を超えて日本に投手王国を造り上げてきたのも歴史的事実なのである。

としている。返す刀でトミー・ジョン手術が多いアメリカの現状を、

高卒間もない投手に限らず、メジャー・リーグ全体をみても、毎年20人前後の投手がトミー・ジョン手術を受けているが、日本のプロ野球では毎年2、3人といったところだ。
 球団数の違いや、トミー・ジョン手術に対する考え方の相違などを考慮しても、ガラパゴス日本の投手の方が、致命的な故障が少ないと言えるのではないか。


と書いている。この部分、明らかにおかしい。

トミー・ジョン手術はアメリカでは「致命的な故障」の治療法ではない。じん帯が損傷して「これ以上投げたら致命的な故障につながる」と判断したときに行う。
大谷翔平は昨年、試合中に球速が落ちて降板し、トミー・ジョン手術となったが、この程度の故障なら、日本ではおそらくノースローの期間を経て手術を受けることなく投げさせたはずである。しかしアメリカでは「黄信号がともったら」手術をするのだ。
田中将大のようにPRP療法など、温存療法でしのぐ投手もいるが、限定的だ。

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日本では、アメリカの基準ではトミー・ジョン手術が必要なレベルの異状が見つかってもなかなか手術をしない。そして本当に「致命的な故障」に至って手術するのだ。だから、日本の方がトミー・ジョン手術の成功率が低いとされる。

トミー・ジョン手術が増えているのは、投球数だけでなく、投手の球速が上がり続けていることも大きい。より球が速い投手が多いアメリカで、トミー・ジョン手術が増えているのはそれも一因だ。
しかし、日本の方が「致命的な故障が少ない」というのは説得力がない。

「甲子園というシステム」が、100年を超えて日本に投手王国を造り上げてきた、と書いているが、その投手王国でどれだけ多くの投手がケガ、故障のために前途を断たれているのか。甲子園で活躍する投手を作り出すために多くの投手が犠牲になってきた、という事実をこの書き手は知らない。

こういう意見が「一般論」として流布するから、「球数制限」を核とする高校野球改革はなかな化進まないのだ。


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