プロ野球は「実力の世界」だといわれる。これは「野球の能力が高い人、結果を出してチームに貢献する人」が常に優先される世界だ、ということだ。
もちろん「実績」「功績」はそれなりに評価される。永年実績を上げた人は1、2年活躍した人よりも年俸が高い。つまり評価が高い。

しかし目の前の試合に出場できるのは「実績がある選手」ではなく「今、高いパフォーマンスする期待がある選手」である。そういう意味では、選手の評価は「時価」であり続ける。

選手も、選手と契約を結ぶ球団も、そのことを了解している。だからふつうは「俺はあの選手よりヒットは打てないけれど、試合に出してくれ」とは言わない。
そして、選手の実力が著しく落ちた場合は、その選手は他の選手のために籍を空けて退場しなければならない。

それが「実力の世界」、プロ野球の掟である。昭和のサラリーマンのように、長く会社にいるから能力はなくとも高い給料がもらえる、ということはあり得ない。

しかしロッテの福浦和也は、明らかに現役選手の実力がなくなっても、現役選手であり続けた。球団が「二軍コーチ兼任」という立場をオファーし、それを受けたからだ。選手の指導能力を買われたのであれば、単にコーチになればよかったのだが、経営陣から「来年も頼む」と言われたのを真に受けて、現役の席を残し続けたのだ。
しかし二軍でも15打数4安打0本4打点、打率.267。戦力とは言えなかったし、一軍でもお呼びがかからなかった。そもそも球団も本人も、一軍でプレーするとは思っていなかったのではないか。

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永川勝浩は、昨年こそ少し投げたが、今季は二軍暮らし。福浦同様に一軍には上がらなかった。

福浦、永川ともに、自分たちでも「もう一軍で活躍する実力はない」と自覚していたのではないか。だとすれば、何のために現役選手の籍を残していたのか、理解できない。結局「公式戦で引退試合をしてもらうため」ということになるだろう。

要するに二人とも「セレモニー要員」だったのだ。

今の選手は「引退試合をしてもらうこと」がよほどうれしいのだと思うが、このセレモニーのために、若手に譲るべき選手のポストに居座り、1年を空費したのだ。

上原浩治は、自分が一軍で通用しないと思ったら、すぱっと引退を表明して球団から離れた。そうしないとチームに迷惑がかかるからだ。若手の邪魔をしないためにも、そういう決断をしたのだ。

プロ野球で出処進退を自分で決めることができるのは、一流の選手だけだ。多くは続けたいと思っても首になるのだ。
その権利を行使して、上原のようにスパッと潔い引退をする選手もいれば、福浦や永川のようにペナントレースに割り込んで、セレモニーをしてもらう選手もいる。もちろん、引退セレモニーは福浦や永川が球団におねだりをしたのではないとは思うが、それを受ける神経はどうかと思う。

永川も、福浦も、球団史に残る名選手である。その功績は讃えられてしかるべきだ。だとすれば、その引き際も、功績にふさわしいまっとうなものであるべきだ。

そういう点でも返す返すも残念だ。


ルーキー最多安打レース・2019

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