gazinsaiというブロガーがこんなブログを書いている。
野球ブロガー・広尾晃氏の「〈サイン盗み〉の野球史」を嗤う


読まなければよかったと思ったが、読んでしまった。
頭の中で考えただけで、事実関係をただの一つも調べない、知的に極めて怠惰で不誠実な批判だと思う。仮定の話で批判されてはたまったものではない。玉木正之さんに対する批判も的外れだ。

twitterでご本人にコメントをしたが、返事がない。ちょうどいい機会なので、日本高野連が「サイン盗み」を違法行為と認識し、それを通達するに至る経緯を詳細に説明しておく。

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1996年は高校生の海外遠征が2つあった。4月末のAAAアジア野球選手権大会(フィリピン)と、8月31日からの世界四地域親善高校野球大会(米カリフォルニア)だ。問題は8月のアメリカ遠征。

この米の大会は、松山商の澤田勝彦監督が率い、代表には阿部真宏、石井義久らがいた。あの熊本工の「奇跡のバックホーム」があった年だ。

9月1日に行われたアメリカ選抜戦の5回、日本の攻撃でアメリカ人の三塁塁審が血相を変えて日本ベンチに来て「二塁走者が打者に捕手のサインを伝えている。すぐにやめさせなさい」と注意。その後も「一塁コーチが捕手の動きを見て何かを叫んでいる」と厳しく注意された。監督の指示ではなく選手が勝手にやっていたという。
朝日新聞によれば澤田監督は
「恥ずかしながら、私自身も、何の違和感もなかった。捕手のサインや動きから球種やコースがわかれば、打者に教える。日本では普通にやっていたことだから」
と述懐しているが、澤田監督の証言でもわかるように、このときに日本側は初めて自分たちの行為の不適切さに気が付いたわけだ。

それ以前にも日本代表が国際大会でサイン盗みをしたことはあった。そのときに注意を受けたことはあったようだが、ここまで激烈な叱責を受けたことはなかった。また言葉の問題もあって、何を注意されているのか理解できないこともあったようだ。

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この大会には、日本高野連の牧野直隆会長が団長として同行していた。牧野会長は1991年、大野倫の甲子園での疲労骨折の後に高校球児のメディカルチェックの導入を推進した人物。日本流の「精神野球」「勝利至上主義」を嫌悪し、改善すべきだと考えていた。戦前に日米野球にやってきたベーブ・ルースらに野球の手ほどきを受け、アメリカ流の野球への造詣が深かった。

この牧野会長の指示もあって、これもこの大会に同行していた当時の田名部和裕日本高野連事務局長らが動いて、1998年の「サイン盗み禁止」の通達につながったのだ。

私は牧野直隆という野球人に強く惹かれるが、日本高野連のこの通達の後も「サイン盗み」は存在している。高校野球の「勝利至上主義」の根の深さに思い至る。

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ちなみにgazinsaiさんは、日本<アメリカだから、日本は従わざるを得なかった、反対のケースならそうはならなかったと書いているが、戦後、日本が野球の国際大会に復帰した1946年から日本は審判を出している。野球では、そしてすべてのスポーツでは審判は「マスター・オブ・ゲーム」で試合では最高の権威がある。どこの国の審判でもその指示には絶対に従わなければならない。

審判に対する態度が最も悪いと評判なのは、日本人だということも付け加えておく。今夏の韓国でのU18でも日本チームの審判への態度は悪かった。

gazinsaiさん、たぶん読んでも理解できないだろうが、こういうことなんですよ。あなたの批判は的外れでしょ?コメント欄でも、メールでもいいから御返事ください。


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