玉木正之さんのスポーツ論は、スポーツに関わる人必読だ。この人がいなければNumberはなかったのだが、68歳になる今も、だれよりもフレッシュだ。
これは20年前に書いた「スポーツとは何か」の続編だ。
書下ろしではなく、近年、いろいろなメディアに書いた記事の修正だが、20年前とは劇的に状況が変わったスポーツ界に対する玉木さんの見解を述べている。

「甲子園の球数制限」についても手厳しい批判をしている。炎天下に投手を酷使することを評論家やメディアが賛美するのは、投手が壊れても、その責任を問われることがないからだ。朝日新聞や毎日新聞は、子どもの犠牲の上に商売をしている。ここまではっきり書くジャーナリストはいないだろう。

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eスポーツについては玉木さんははっきりと「スポーツではない」と言った。
この話題に触れると、当サイトにも、カンカンになって怒ってくる人がいる。子供っぽいなと思っているが。「知らないなら黙ってろ」「ほっとけ」と言われるのだが、スポーツの貴重なリソースや予算が、eスポーツに流れることを看過するわけにはいかない。
玉木さんはスポーツとは「暴力否定、民主主義尊重の文化」であると規定し、eスポーツにはそれと真逆の「暴力や先頭を誘発するような要素」があるのではないか、としている。確かにeスポーツには、戦争や暴力、殺人のバーチャルが非常に多い。あれが「暴力の否定」につながっていると見るのは難しいだろう。むしろ暴力の肯定、助長ではないのか?
実は判断に迷っていたのだが、この点でも玉木さんには賛同する。だから私も今後は「eスポーツはスポーツではない」と主張しようと思う。
eスポーツは、スポーツのマーケットを広げる上で期待できるとビジネス的に思う人が多いようだが、要するにそれは「肉体を使う文化」であるスポーツが、バーチャルに乗っ取られることを意味しているのではないかと思う。
仲間内でも意見が分かれるところだが、何年かたってスポーツといえばeスポーツが主流で、リアルなスポーツは経済的に衰退して細々と行われているような状況は見たくない。
最近のeスポーツは、よりリアルに、よりえげつなく暴力シーンを作りこむようになっている。どんどんスポーツから離れていっていないか?今のうちにカテゴリーをはっきり分けるべきだろう。

玉木さんは最近、スポーツの現場に全く出てこない。プロ野球からは締め出しを食らって久しい。このことを批判する人は数多い。
しかし現場にいる人が、取材対象と密着するあまりに書きたいことも書けなくなっている現状(これ、スポーツだけではないが)を考えれば、玉木さんの方がはるかにましだろう。自分の意見も言わずに(あるいは持たずに)選手や指導者の尻を追いかけて、おこぼれのような言葉をもらって記事にするようなジャーナリストは、玉木さんに遠く及ばない。氏原英明さんのように現場にいながら「はっきりモノをいう」人だけが、玉木さんを批判すればいいと思う。

ついでに、玉木さんのおすすめの本を2冊紹介しておく。





芸術や伝統文化に関する意見は、私とは感覚が違う。インテリすぎるなと思うけど、スポーツ批評では、玉木正之さんはやっぱりすごいと思う。


中日・ナゴヤ球場・ナゴヤドーム・シーズン最多本塁打打者/1950~1988、2007~2019

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