この間、高校野球の有力選手が慶應義塾大学のAO入試で不合格になったことがニュースになっていた。多くの野球ファンは「残念だ」と言っている。私は必ずしもそうは思わない。

この手のAO入試というのは誰でも受けることができるわけではない。学校各部門からの推薦を受けて受験する。
慶應は日本でAO入試を始めた最初の大学であり、すでに30年になる。面接、あるいは論文で選考する。いわゆるFラン大学などでは入試が形がい化していることもあるが、AO入試といえども名門私学の場合は、しっかりと「選考」する。

慶應のAO入試で落とされて話題になっているのは、愛知・中京大中京の高橋宏斗だ。彼のほかに7人の高校球児が野球部の推薦で受験したが、合格したのは2人だけだったという。推薦を受けて落とされたのだから、よっぽどひどかったのだろうと思う。
野球部からすれば痛恨かもしれないが、慶應義塾は、こういう形で矜持を保ったということもできるだろう。

今、日本の大学スポーツは実質的に「スポーツしかしてこなかった」選手で持っている。長年この状態で放置された弊害がいろいろ出ている。そうしたOBが指導者として残り、部の体質を形成していく。目上の者には絶対服従の中で、硬直化した人間関係が継承されている。
東京六大学など名門体育会系でも、日常的に暴力が行われているが、こうした事実明るみに出ることはない。
私はいくつかそうした事例を当事者から聞いた。今でも指導者と選手、選手同士の暴力沙汰は日常的にある。伝聞としてはいくつもあるが、新聞などのスポーツメディアの記者はこうした大学スポーツ部の出身者も多く、忖度して報道しない。警察沙汰になってはじめて表に出るのだ。

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高校野球にも旧弊な体質が残っているが、高校は大学よりもはるかに組織が小さいので、メディアへの隠ぺいが難しく、不祥事が明るみに出ることが多い。
学生野球協会は、大学野球の不祥事はよほど大ごとでない限り制裁しないが、高校野球は喫煙程度でも罰則を科している。

東海大野球部の大麻使用もこうした極めて閉鎖的な体質で起こった事件だといえよう。

すべてではないにしても、大学スポーツ部の中には「教育機関」とは言えないようなものも存在しているのだ。

スポーツ庁は日本版NCAAであるUNIVASを作った。その目的の一つが「スポーツ選手に少しは勉強させる」というものだった。
UNIVASの幹部には従来の大学スポーツの幹部が蟠っているので、なかなか改革は進まないだろうが、高校野球が少しずつまともになってきている中、大学スポーツのおかしな部分がこれから浮き彫りになるのではないか。


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