NHK
プロ野球や大リーグで活躍したイチローさんが、年内にも甲子園で優勝経験のある関西の高校で、初めて選手を指導することになりました。(中略)イチローさんは、去年12月に、学生野球の指導に必要な資格回復のための研修を受け、日本学生野球協会による審査を経て、ことし2月に指導資格の回復が認められました。そして、年内にも、甲子園で優勝経験がある関西の強豪校で、選手を指導することになりました。
功績に対する特例もあって、シアトル・マリナーズに所属したまま資格の回復を認めていた。

イチローは30年近く前に高校で野球をしたのちに平成のプロ野球に入り、20年前にMLBに移籍してスーパースターになった。

高校野球に対する価値観は、30年前のものだろう。引退後にアマ球界とそれなりのコミュニケーションはあっただろうが、イチローに対して何かを説明したり、理解させたりすることができる存在は皆無だろう。

資格回復の研修では、筑波大学の川村卓先生などから、最新のコーチングの話も聞いたはずだが、1度や2度の話で理解が進むとも思えない。

イチロー自身は、体育会系の指導には否定的だ。上から押し付けられたことに盲従するのではなく、自分で課題を見つけ、努力してきた。
よく小学生に「野球をうまくなるためには、宿題をきちんとやりなさい」と話していた。「やるべきこと」を自分の意志で完ぺきにこなせてこそ、野球も上達できる。
意志の強さ、自律の大切さを子供たちにわかりやすく説いたのだ。

そういう部分は大事だとは思う。

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しかし、今の高校野球の現場、とりわけ甲子園に出場するような私学の現状について、イチローはどこまで知っているのだろうか?
私学は「甲子園出場」のプレッシャーの中、勝利至上主義に凝り固まっている。「球数制限」などはもちろん知っているが「勝つためにはなんだってする」私学が多いのだ。またほとんど試合に出られない「補欠」を大量に抱えてもいる。
イチローの時代からその状況は大きく変わっていないが、30年前と異なり、野球の競技人口は激減している。旧弊な高校野球の体質に批判が集まっている。

そういう状況をよく知らずに技術面だけの指導を行えば、古い考え方の高校野球に利用されかねない。客寄せパンダになった挙句に「あのイチローが、勝利至上主義を肯定した」「球数制限は必要ないと言った」となる可能性もある。

そうなればイチローは傷つくことになるだろう。極めてデリケートなコミュニケーションしかできないイチローは、幻滅してしまうかもしれない。

そんな危うさを感じる。もし本当にアマチュア野球の指導者になるのなら、イチローは日本野球の現状をもっとつぶさに知る必要があるだろう。

変な話だが、今回の指導は、可能な限り軽いものであってほしいと思う。


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