昔は球界の盟主とか、伝統とか、名門とか言ってふんぞり返っていた読売ジャイアンツだが、今は切実な危機感があるのだろう。
日刊スポーツ
巨人が来季のDH制暫定導入を提案したことを14日、発表した。山口寿一オーナー名の文書でこの日のセ・リーグ理事会に提出された。新型コロナウイルスの影響が残る中、投手の負担軽減やチーム強化、プロならではの試合の提供を理由に挙げた。だがセの他球団からは従来通り、慎重論が根強く、来季導入は見送られることが決定的になった。

「慎重論」、何に対して慎重なのだろうか?
そうすることによって、どんなリスクやトラブルが想定されるのだろうか?

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セ・リーグの野球が変わってしまう…
それはそうだろう。しかし、パ・リーグに全く歯が立たないという現状を考えれば「変わってしまう」ではなく「変えてしまう」ことが必要だと思うのだが。

ファンが離れていく…
「俺は投手がお嬢さんのようにバットを振っている姿を見るのが大好きだったんだ」
「相手投手が捕手とキャッチボールをするように投手から三振を奪うのを見て、これこそプロ野球だと思ったんだ」
そういう極通のファンがいたとすれば、彼らを失う恐れはあるだろうが、普通に考えれば「弱い方のリーグ」としてセ・リーグが定着するほうが、ファンが離れる恐れがあると思うがどうか?

チーム編成が変わってしまう
もちろんDHを導入すれば、選手の育成や編成に影響が出るのは間違いない。しかし毎年選手やコーチ、監督が入れ替わる中で、育成や編成の見直しは毎年行われている。ことさらに大きな手間暇がかかるわけではない。

「慎重論」の実際は、上記のようなちまちました取るに足らない理由ではないだろう。球団幹部にとってははるかに重要な理由で、DH制導入を見送ったのだろう。

球団幹部の退社時間が遅くなる
新型コロナ禍による時短で、巷の飲み屋の営業時間は短くなっている。DH制導入で残業をすれば、飲み屋で会食をする時間がますます短くなってしまう。親会社から来た幹部社員の中には、この時間のために会社に在籍している人も多い。彼らにとっては切実な問題なのだ。

新しいことをいろいろ考えなければならない
両リーグ分立から70年。セ・リーグの「他球団と同じ」「去年と同じ」「上の指示通り」での会社運営は、もはや名人芸の域に達している。その伝統を破って「新しいことをする」のは、セ・リーグの基本理念に反しているうえに、親会社から来た幹部社員にとっては「苦行」である。
退職金の額の計算と退社までの年限を考えるだけに頭を使っている彼らに、パソコンを触ったり、本を読んだり、人の話を聞いたりするのは「幹部社員虐待」と言ってもよい。

こうした幹部社員の「人権問題」が、慎重論の根底にあるのだろう。誠にもっともなことである。幹部社員の人権は、選手やファン、一般社員の将来よりもはるかに重い。
それにパ・リーグに負け続けたとしても、もう少し耐え忍べば、文部科学省からセントラル・リーグのマネジメントは麗しい「無形文化財」として、後世に守り伝えられる可能性もある。

「負けるが勝ち」という言葉もある。こうして考えてみると、日本シリーズや交流戦で負け続けても、セントラル・リーグは「すでに勝っている」とみなすこともできるだろう。

日本社会の上層部には、同じように「何も変えたくない」「何もしたくない」という、素晴らしい志を持った人たちがたくさんいる。彼らのためにも頑張っていただきたいものだ。


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