これ、前から気になっていたのだ。コメントでやり取りするうちに、考えてみようと思った。

先発投手は、投球数、登板間隔などを目安に、酷使にならないように調整することが可能だ。
また原始的ではあるが、PAPという指標もある。
MLBでいえば100球、中4~5日という目安がある。NPBにははっきりしたものはないが、実質的に中6日100球になっている。先発で常時100球を超えて投げる先発は一握りだ。

しかし救援投手には「酷使」に関する目安もない。投手コーチも個別の投手の体調やフォームの崩れには気をかけるが、何球投げたから、何日連続で投げたから休ませるという目安はない。

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なぜか?救援投手は先発投手と大きく異なるからだ

1.救援投手は起用の方法に法則性がない

先発であれば中何日で何球という法則性ができるから、制限をかけることができるが、救援投手は、1イニング限定の投手もいれば、回またぎをする投手もいる。登板予定は、先発投手や他の救援投手の事情で、刻一刻変化する。「上りの日」はあるにしても、中何日とか、何連投以上は禁止などのルールを救援投手全員に課すことは難しい。

2.救援投手はステイタスが低い

先発で長いイニングを投げることができる投手は、数が限られている。1人でチームを勝利に導くことができる存在であり、日米ともに高額で契約される。
しかし救援投手は「その他大勢」であり、よほど数字を残さない限りはNPBでは1億円プレイヤーにはなれない。セットアッパーやクローザーで長く活躍すれば評価されるが、1,2年の投手はステイタスが低い。身もフタもない言い方をすれば「替りの投手はいる」という扱いだ。

3.救援投手の「肩肘を守る」方法論が明確ではない

救援投手は原則として1イニングを投げるが、抑えるのが至上命題だから「何球まで」という球数制限を設けることができない。何連投まで認めるか、については「4連投はなし」などの基準はあるが、それが「肩肘を守る」ことにつながっているかどうかはわからない。
森繁和さんは、私に「救援投手は立ったり座ったりする回数が増えればつぶれる」といった。要するに「登板回数」と「回またぎ」が問題だという見方だった。

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実際に聞いた例で言えば、清川栄治さんは「救援投手はつぶれるまで投げるもの」「つぶれた時が、選手生活のおしまい」と語った。佐藤達也さんも「短かったけど、活躍できてよかった」といった。

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例えば、先発投手なら肩肘を守るために「このイニングで降板させてくれ」「次は登板回避させてくれ」ということがあるが、救援投手が、身体の異状もないのに「回またぎはやめてくれ」「明日は休ませてくれ」と言えば「次がなくなる」可能性がある。

先発投手は「ローテを維持してできるだけ長く活躍して、100勝、200勝を挙げたい」という目的を抱くが、救援投手は「短くてもいいから活躍して、年俸を挙げたい」と思う。納得ずくで「酷使」に耐えるものだ。一般論で言えば。

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これがいいことかどうかは、私には判断がついていないが、現状はそうだと思う。

救援投手を休ませるために、先発投手が長く投げるというのは、局面では成立する状況ではあるが、一般論としては難しい。先発投手が長く投げて故障したり、パフォーマンスが落ちたときに、代わりの投手を見つけるのは至難の業だが、救援投手は、比較的簡単に見つけることができるからだ。

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NPBにもMLBにも一時期救援投手で活躍して、今はくすぶっている投手がたくさんいる。救援投手はそういうものだ、と言っては酷だが、今のところ救援投手の「酷使」の問題の解決策はないのではないか?

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1969・70年東尾修、全登板成績【主力投手退団の中、先発陣に】

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