森喜朗の「女は話が長くて困る」は、今の日本的には、公的な席での発言でなければ何の問題もなかった。国防界の広岡達郎こと田母神様は「何が悪いのかわからない」と言ったが、そう思っている人はたくさんいるだろう。
日本社会では女性は男性の後からついてくるもの。男性のおまけだという意識は、ごく普通の観念として定着している。かくいう私だってそういう意識がないかと問い詰められれば、断言する自信はない。「女だてらに」「男勝り」みたいな言葉は普通に使っていたように思う。

しかし日本はこの分野では、世界でも極めて遅れた国だ。女性の社会参加のレベルで言えば、世界でのランキングは下から5分の1くらい。経済ランキングに置き換えれば、食うや食わずの世界の最貧国なのだ。
「なんでも世界世界言うな、日本には日本のやり方がある」という言葉は、鎖国でもしない限りもう通用しない。

野球の世界は、そんな中でもさらに遅れているといえるだろう。
私は「野球離れ」について調べたり書いたりしているが、この問題は男性だけの問題だ。女性の野球人口は今、増加している。
しかし「野球界」というときに、女性、女子野球も含めてとらえる人は、ほとんどない。
「野球をやる子が減ってしまって、今では女の子も混ぜないと試合ができない」と嘆く少年野球の指導者もいるが、これなど女性を補助的な存在だと思っている証左だ。

私は数年前から、女子野球のレジェンドと言われる人にいろいろ話を聞いているが、彼女たちは男社会にあって、必死の思いで野球を続けてきた。男にとっては差別でも何でもないことが、彼女たちを傷つけたり、阻害したりした。
この世の中には、男と女がいる。体の大きさや機能など、生物的な差異はあるが、享受する権利や社会的立場は同じ。この自明のことが野球界をはじめ日本社会では理解できていないのだ。

女子プロ野球は独裁的なトップ(男性だ!)によって自滅寸前になっているが、NPB球団や社会人、大学野球などが、ようやく女子の世界にも本腰を入れるようになった。

もちろん投手の球速は120㎞/hが精いっぱいで、ホームランもめったに出ないが、それは「性差」であり、当然のことなのだ。
昨日はジャンプの高梨沙羅が58勝目を挙げたが彼女に向って「男と一緒にやれば優勝なんかできないだろ」という馬鹿はいない。
同様に、女子野球を見て「男子よりスピード感がない」「パワーがない」というのは自分のジェンダー意識が低いことを露呈した言葉だ。

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男子と違って女子野球はこれまで競技人口が少なく、試合数も少なかったが、今後充実してくれば「男子とは異なる見どころ」が出てくるはずだ。
「なでしこジャパン」で女子サッカーが一定の人気を博したように、女子野球もしっかりファンがついて、人気スポーツになっていく可能性は大いにある。

「野球離れ」を食い止めて、野球ファンを増やすためには「女子野球」の振興は、必須と言ってもよい。
中学以下の野球では女子が男子とやる習慣が定着しているが、例えば甲子園も、大学野球も、プロ野球も「男女一対」でやるような仕組みにしていくべきだと思う。もちろん、男子と全く同じことをするのではなく、女子野球ならではのルールや仕組みを取り入れながら。
森喜朗の馬鹿によって、ジェンダーに関する観念で、レベルが低いことを世界にさらした日本は、ここを起点に我々は考えを切り替えるべきだろう。


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