今年の春季キャンプ取材は17日間だった。関西空港に降り立った時に、えげつない風の冷たさにたじろいだ。昨日の那覇は最低気温14度。みんな「寒い寒い」と言っていたが、昨日の大阪は最高気温が6度だった。
それ以前にも何度かキャンプに入っていたが、2015年からは長期間で、各球団のキャンプを回るようになった。別に誰から頼まれたわけでもないので、ここ7年、ずっと自腹だ。今年はだいたい30万円くらいか。
2017年からはキャンプのガイドブックを作ったり、メディアに記事を書きだしたが、いつも家人に言われる通り「完全な持ち出し」である。交通費などはもらったことがない。今年はキャンプ関連で8本ほど書くが、赤字確定である。

そしてキャンプの取材は、ものすごく面白いわけでもない。どのチームでも朝のウォーミングアップからキャッチボール、投内連携、シートノック、ブルペン、打撃練習まで見れば昼が来て、あとは個別という流れだ。選手や指導者に注目して見たり、報道陣や解説者の表情を見たりしているが、それでも倦んでくることがある。また、春季キャンプは練習と練習のインターバルが長いのだ。待ち時間が非常に長い。「一体俺は何をしているんだろう」としばしば思う。

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また移動も長い。私はレンタカーを借りたりしないから、公共交通とタクシーだ。宮崎市から日南市は2時間弱、那覇市から国頭村は2時間半。延々とバスや電車に揺られてそういう「退屈なもの」を観に行く。

そして私のようなウェブメディア系、雑誌系のライターは、多くの球団にとって「招かれざる客」である。今年も申請をして即座に断ってきた球団がある。
今年は、練習試合のある日に行って「練習試合はNPBパスを持った人だけ」と言われた。NPBパスは原則として記者クラブに加盟しているメディアにしか発行されない。それ以外の人は取材の都度、申請をする。もちろんこのときも申請をしていたし、PCR検査もこのために受けた。申請時には練習試合はNPBパスだけとは言われていなかった。でも「ダメ」とのことだった。私はこのためだけに朝早く起きて、1時間以上かけて現場に来ているのだ。広報担当は、私の息子くらいの年齢だが、無表情に断った。仕事だから当然ではあるが、こういう目に度々あうのだ。大げさな話だが、人種差別されるとは、こんな感じかと思う。

そういう嫌な目にあいながら、自腹でなぜこんなことをしているのか?原稿を書くだけなら、家にいてデータやネットの情報をもとに書けば、それでもお金になるのだ。

一つには私はNPBの試合の取材はしない。何度か取材申請をして球場に行ったことがあるが、プレスの記者は必死にスコアをつけているか、選手や監督を追いかけまわしてコメントを取っている。試合全体を見渡したり、観客席の空気を感じている記者はいない。NPBパスがないと単独で取材をできない球団も多いが「ホームランを打ったのはどんな球?」みたいなくだらない取材をするために、ビールも飲まずに球場に行きたくない。

私にとって、春季キャンプはプロ野球の選手や監督の「生の表情」「リアルな実態」を知るほとんど唯一の機会なのだ。
さらに言えば、広報や球団スタッフなどとのやり取りも重要な情報だ。球団によってメディアに対する対応は、びっくりするほど異なっているのだ。彼らの対応を見れば、その球団がどんな会社なのか、どんな社員教育をし、何を大事にしているかがよくわかる。私は永年、企業のアニュアルレポートや会社案内、社史を書き、事業計画を立ててきたから、その会社の社員と口をきくだけでどんな会社かが端的にわかる。いきなり広報から「誰だ、お前は?」みたいな対応をされるのも、立派な取材なのだ。

ライターという仕事は、取材以外の仕入れは発生しない。春季キャンプ取材は「プロ野球とはどんなビジネスで、どんな企業、どんな人たちがやっているのか」をリアルに知るという点では、大変貴重な「仕入れ」なのだ。だから十分に元は取っているのだと思う。


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