「無観客での五輪開催」という声がいまだに出ているが、最近の日本国内の状況を見ていると論点はそこではないと思う。
日本国内で言えば、スポーツ観戦や演劇、音楽鑑賞などでのクラスターは発生していない。初期にはライブハウスが感染源になったが、今の日本の人たちは、行動変容がかなり進んでいる。

観客は間隔をあけて座り、基本的にはマスクを装着したままグラウンドや舞台を注視する。リアクションは歓声ではなく、拍手やメガホンなどを打ち鳴らしてのものになっている。
私は昨年、感染症対策下でプロ野球を30試合ほど見たが、大声で騒いでいるお客はほんの少数であり、大部分のお客はマスクを着けたまま、おとなしく観戦していた。
昨年、NPBの試合由来の感染者はたった2人だったと報告されている。これは全く信用できないが、少なくともスタジアム由来の感染やクラスターはほとんど起こっていない。
その代わり、観客席では「マスクGメン」のような警備員が目を光らせていた。長時間マスクを外して話していたり、鼻出しマスクで観戦している人には、警備員が飛んで行って注意をしていた。

このスタイルはNPBでもJリーグでもある程度定着している。一つの方法論が出来上がっているといってよいだろう。

東京五輪でも、スタジアムで同様の体制が確保できるなら、有観客での試合開催は可能だとは思う。

しかしそれはあくまでも「日本国内」の話だ。
海外ではサッカーの試合などで、フーリガンなどファンが大騒ぎをしてクラスターが発生している。日本人と違って「新しい観戦スタイル」をおとなしく受け入れる外国人はそれほど多くない。サッカーやバスケなどエキサイトする競技になれば、そうした外国人が係員の制止を振り切って大騒ぎする可能性もあるだろう。さらに勝った負けたでスタジアム周辺で大騒ぎする可能性もあるだろう。
一昨年のラグビーワールドカップでの騒動が記憶に新しいところだ。

こう考えてくると、こと観客だけで言えば、外国人の観光客を入れず、日本国内の観客だけなら有観客での五輪の開催は可能なようにも思える。

しかし「選手」に関してはこうはいかない。オリンピックは世界から1万人を超す選手、指導者、スタッフがやってくる。彼らは競技の時間だけでなく、日常の生活時間でも「感染症対策」をしなければならない。
しかし一般の人と同様、選手たちの感染症に対する意識もまちまちだ。日本でも選手からしばしばクラスターが発生するが、練習やアフターの時間でいろんな濃厚接触をして感染拡大するリスクはかなり高い。
選手を宿舎に押し込んでしまえば大丈夫と思うかもしれないが、家畜の様に従順な日本人選手はともかく、自己主張の塊のような外国人選手に言うことを利かせるのは並大抵のことではない。

さらに、選手、スタッフとともにやってくる報道陣は、所属する会社や組織も雑多、国籍も雑多で身元が特定できない人も多い。日本のメディアは取材パスが厳格に絞られるだろうが、海外の場合、感染拡大地域の人でもパスを取得するのは容易だ。おかしな理由でパスを発給しなかったら「人権」「言論の自由の侵害」と言われかねない。さらに来日したそういう人たちの行動を制約するのは、選手以上に難しい。

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一番いいのは、来日する選手、関係者、報道陣の「ワクチン接種」を義務化することだが、すべての国でそれを徹底することはできない。IOCはすでに「ワクチン接種を条件にはしない」と明言している。
そもそも日本で、高齢者、基礎疾患のない若い人々のワクチン選手は早くとも6月だといわれている。選手のワクチン接種が東京五輪に間に合う可能性はそれほど高くない。

PCR検査を定期的に義務付けることはできるだろうが、PCR検査は感染者を見つけることはできるが、感染拡大を防ぐことはできない。

これらのことを勘案すると、今、議論されている「無観客での開催」はポイントがずれていると思う。
問題は観客ではなく、世界中からやってくる選手とスタッフ、報道陣の方だ。彼らを管理することは事実上不可能であり、そうであるならば五輪の開催も不可能だと結論付けざるを得ない。

東京五輪開催の前に横たわるのは、日本人と海外の人の感染症に対する意識、スキルの違いだということになるだろう。



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