ラグビー・リパブリック
今年の9月、10月にニュージーランドで開催される予定だったラグビーワールドカップ2021(女子大会)は、世界的にいまだ収束しない新型コロナウイルスの影響と、さまざまな不確実な状況を受け、2022年に延期することが正式に決まった。
すでに来年冬の北京冬季五輪も延期を検討しているとの報道が出ている。
今年7月の東京五輪はますます追いつめられた感がある。

ニュージーランドがラグビーワールドカップ女子大会中止の決断に至った背景について考えてみよう。

1.国内のパンデミックの状況

ニュージーランドは世界で新型コロナの観戦抑え込みに最も成功した国の1つだといわれている。感染者数はここまで2409人、死者は26人。人口は日本の24分の1の500万人だが、感染者数は180分の1である。しかしそれはニュージーランド国内だけの状況である。

2.参加国のパンデミックの状況

参加国は12か国、選手関係者は600人とされるが、アメリカ、イングランド、フランス、カナダ、アイルランド、スペイン、日本などニュージーランドよりもはるかに感染者数、陽性率が高い国ばかりだ。
そもそも代表団を送ることができるかどうかも不確実だ。前述のとおりそうした国から来た選手、関係者の防疫は極めてリスキーだ。

3.大会への先行投資

ニュージーランドは女子ラグビーの最強国であり、男子も含めてラグビーは極めて盛んだ。国内には既に多くのラグビースタジアムがある。もちろん会場や周辺の施設整備は行っただろうが、先行投資はそれほど多くはない。

4.国民の支持

アーダーン首相はメリハリの利いた感染症対策によって、新型コロナをほぼ完封した。政権に対する国民の支持率は極めて高いが、それは新型コロナの抑え込みによるものだ。世界から選手や関係者を受け入れれば、感染者を封じ込めることはほぼできない。そうなれば国民の政権への支持率は急速に下落するだろう。

ワールドカップ女子大会は、延期することができるはずだ。「無理してやることはない」から早々に延期を決めた。

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これに対し、東京オリンピックは

1.国内のパンデミックの状況

欧米諸国に比べれば感染者数は44万人と少なく、医療面での直接的な被害は軽微だが、医療体制や経済面では、はるかに感染者数が多い国と同じくらいのダメージを被っている。

2.参加国のパンデミックの状況

参加国は100か国を優に超え、1万人以上の選手団がやってくるとされる。しかしパンデミックが終息している国は今年7月の時点では、ほとんどないと考えられる。アメリカは東京五輪に賛成すると表明したが、大会参加の有無は「選手の判断にゆだねる」とした。まったく先行きが見えない。

3.大会への先行投資

東京オリンピック開催が決まってから、首都圏を中心に莫大な投資を行い、競技場やインフラの整備を行った。オリンピックを開催しないとなると、国、東京都、JOC、協賛企業は甚大な損害を被るといわれている。

4.国民の支持

新型コロナウイルス対策の度重なる失敗で、安倍晋三、菅義偉と二代の総理大臣は、支持率が低迷している。そんな中での東京五輪の開催に、多くの国民が「厭戦」気分を抱いている。
むしろ開催を強行するほうが、国民の支持を得られない可能性が高い。

両イベントを比較すると、東京オリンピックの方が圧倒的に大きいにしても、国際イベントとしては同じような条件であることがわかる。

唯一異なるのは、東京オリンピックが巨大な投資をしていることだ。その投資を回収しないままに事業を終了することはできない。
結局、その一点で日本政府は東京オリンピックを「やる」と言い張っているのだ。
典型的な「サンクコストの呪縛」になる可能性が高いと思う。


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