野球の記録で話したい : 春の緩み

今年のオープン戦観戦は昨日で6試合目、今年はこれで最後だが、京セラドームの空気はこれまでとは一変していた。

緊張感がなくて、スタンドがざわついていたのだ。
普通の年なら「球春到来」とのどかな感想が浮かんでくるが、今年は様相が違うはずだ。大阪も緊急事態宣言が解除されてから底を打って、感染者数がじわじわ増えている。プロ野球観戦も用心しながらであるべきだと思うが。

私の後ろには、若いあんちゃんの集団がいて、大騒ぎをしながら野球を見ている。仕事のシフトの話をしているから、バイトの仲間のようだ。

前の席には試合前からすでに出来上がった酔っ払いがいて、馬鹿笑いをしたり大声で叫んだりしている。

そして隣の席には、中年のサラリーマンの二人連れ。ビールから角ハイボールと際限なくプラスチックカップを傾けている。
野球観戦は「ご飲食のとき以外は、マスクをつけてください」となっているが、ご飲食を延々続ければずっとマスクなしになる。

京セラドームの空気が違うのは、この日が阪神戦だったからでもある。オリックスサイドの一塁側にも阪神ファンが侵食してきている。

件の二人連れはマスクを外して大声で話している。そこそこ野球好きなようだが、阪神ファンで、オリックスの選手はそれほど知らない。

この日はエース山本由伸と頓宮裕真のバッテリー。山本が2歳下だが、この2人は実家が隣同士で幼馴染という奇跡のようなコンビだ。

しかし隣のサラリーマンは知らなかったようで
「頓宮って、絶対日本人ちゃうやろ。最低でも沖縄やろ、西表島くらいと違うか」
「張本とか金山とかいうのは、朝鮮か中国やけど、とんぐうはベトナムくらいやろ」
と聞くに堪えない言葉をまき散らしている。

歴史好きなら「頓宮」と聞けば、鎌倉時代や室町時代のことが脳裏に浮かぶはずだ。ましてや岡山出身ときけば、南北朝とのかかわりなどもイメージするはずだ。

こんな調子で好き放題しゃべっている。特におかしい人ではなく、仕事で付き合えばまともな人なのだろうが、民度の低さを露呈してしまっている。

試合が終わると係員が「規制退場です」と触れ回る。座っているシート別に、順番に特定のゲートから退場するのだ。
しかし件の2人組は「そんなん無視じゃ」とずかずかと外に出ていった。阪神ファンは非常に数が多いから、こんなのも中には混じっている。

誠に不愉快ではあったが、これが日本の野球ファンの現実の一端でもある。新型コロナによって、それが端無くも浮き彫りになった感がある。