「戦争の悲惨さを伝えたい」といっていた世代は、少なくとも80歳以上になった。空襲におびえた記憶を持つ人はそろそろ世の中から退場しつつある。
戦後76年、世界各地で戦争があったが、いわゆる先進国同士の壊滅的な戦争が回避できたのは、いわゆる「戦力均衡」が機能したからだ。具体的には「核の抑止力」が、少なくとも先進国の平和を維持してきた。経済的な覇権を目指す国々は、そのかわりに開発途上国で、現地の政権を手先に使って代理戦争を行ってきた。それをやりすぎたために、荒廃した地域には「イスラム過激派」のような、暴力と破壊をレゾンデートルにする集団があちこちに生まれた。

冷戦後の中国は、戦前の日本と同様、国内の不満をそらせるために海外に経済進出を続け、世界中で軋轢を生むようになった。

中国と、イスラム過激派のようなテロ勢力のために、世界中が緊張状態になっている。そのために国防の必要性は高まっているが、テロ勢力には「具体的な防御」「未然の抑止」が必要であるものの、対中国に関しては「実際に戦争をする」ことを目指すわけにはいかない。
中国はアメリカに次ぐ核軍備国であり、実際に中国と西側国が戦端を開けば、それが通常兵器によるものであっても、核戦争というハルマゲドンにつながる恐れが極めて高くなる。そのことは中国もよく理解している。過激派イスラム教徒とは異なり、中国人はジハードをやれば天国に行けるとは思っていない。あくまで現世利益である。

つまり中国との戦いは、あくまで「見得の切り合い」に終始することになる。弱みを見せればつけこまれるから「一歩も引かない」という姿勢は維持するが、かといって本気で戦争をすることはない。
冷戦時はソ連と西側諸国だったが、今は中国対資本主義諸国だ。いずれにせよチキンレースのような状況が延々続いているのだ。
ときどき「デタント」という形で、ささやかな雪解けがあるが、そうした状況は今後も続く。今の世界平和とは「途上国の血を流しつつ維持する、先進国の談合関係」という感じではないか。

トランプ政権時代の2020年10月と2021年1月に米軍トップのミリー米軍統合参謀本部長が、中国共産党中央軍事委員会連合参謀部の李作成参謀長に「米軍は中国を攻撃したり、何らかの軍事行動を起こしたりはしない」と伝えていたことが明らかになったが、これはコロナ禍での支持率の低下に苦しむドナルド・トランプが、起死回生を狙って軍に本気で中国攻撃を命じる危険性が高まったことを、軍中枢が危惧したのだ。
高名なボブ・ウッドワードらのスクープだが、これによってはしなくも、世界のパワーバランスの「お約束ごと」が、露呈してしまった。

要するに、世界の強国の軍事力は今に至るも「本格的に行使しないこと」を前提に整備、増強されている。トップに立つ政治家は、そのことを熟知し、口では威勢のいいことを言いつつも、リスクバランスには細心の注意を払い、破滅が訪れないように留意しなければならない。

アメリカから連絡を受けた中国が「それでは」と攻撃準備をすることはないのだ。

このニュースを聞いて、日米のトランプ支持者は「ミリーは非国民だ」みたいな非難の声を上げているが、こうした愚かな声はいつの時代も存在する。彼らは勇ましくぶち上げるが、戦争に行くわけでも、戦争責任を取るわけでもない。

使わない兵器のために世界各国が莫大な費用をかけているのは、狂気の沙汰のようにも思うが、それが現代社会なのだ。

9月13日、今の総裁候補4人は「敵基地攻撃能力」について聞かれて、それぞれ専門家風の言葉を用いて勇ましいコメントをしたが、相手が北朝鮮であれ、中国であれ、少なくとも「本気で敵基地を攻撃したら、日本はおしまいだ」という最低限のことは抑えている政治家を支持すべきだろう。

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1988年伊東昭光、全登板成績【オールリリーフで最多勝タイトル】

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