昨日は熊本市内の老舗ホテルの宴会場で、ドラフト会議を見ていた。例によって地べたに座るが、ショッピングセンターなどタイルの床ではなく、ふかふかの絨毯なので、長時間でもそれ程つらくなかった。
独立リーグ初の1位指名の前評判もあった石森はその気満々で、上機嫌でど真ん中の席に座った。横並びで調査書が来た4人の選手が並ぶのだが、評価は天と地くらい違う。9月にインタビューした選手がいたので「結局、調査書何枚来たの?」と聞くと少し残念そうに「1枚でした」といった。率直に言って、そういう選手が指名される可能性は小さい。

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さらに5人の指名される可能性のある選手の後ろには、十数人の選手が座った。この選手たちはドラフト指名される可能性はない。しかしチームの指示で出席させられているのだろう。仲間を祝福するため、そして「こういう風になりたかったら、来年もっと頑張れ」という発破をかけられているのだろう。

5時からドラフト会議が始まり、1位指名が終わると休憩。そして再び2位から指名が始まる。各空団の指名のアナウンスのたびにテレビや報道陣のカメラが石森の顔に集中する。地元テレビ局の記者は小さな声で「サラマンダーズの選手たちは自分の名前が呼ばれるのを、今か今かと待っています」とテレビカメラに向かって話す。
なんとなくじりじりした感じになって、石森が中日から3位で名前が呼ばれると、歓声が起き、シャッター音が鳴り響いた。

指名が決まるとすぐに向かい側にしつらえた「記者会見席」に馬原監督、神田社長とともに並ぶ。ここからはお決まりのパターンである。なぜか指名された球団の帽子を持った人が必ずいて、屏風の前での記念撮影は帽子姿だ。中日スポーツが来ていたが、事前の指名を知っていて帽子を用意していたのかなとも思う。馬原監督は田村正和みたいな男前だ。
ローカル各局のインタビューが順番に続く。キー局からは「あの絵を撮ってくれ」みたいな指示が入って、スタッフが石森にお願いしに行ったりする。

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このホテルの上の階からは熊本城の夜景が見える。それはいいということで、夜景をバックに撮影会になる。私はもういいかな、と思ったが一応お付き合いした。

かれこれ1時間がたったが、石森に続く選手のコールはない。テレビクルーは半分くらいが引き揚げ、やや閑散とした雰囲気になる。

育成指名になっても、呼ばれない。球団が「指名終了」となるたびに軽いため息が漏れる。独立リーガーは育成上位で固まって指名され、中位、下位は高校、大学生ばかり。「化けるかもしれないから念のために取っておこう」みたいな感じだろう。

ソフトバンクは異例の14人も指名したが、結局、火の国の選手は呼ばれなかった。私は彼らの顔を見ることができなかった。会場にはファンクラブの人も来ていた。

「この後ファンの皆様と選手の記念撮影を行います」と球団広報が言ったが、私は会場を出た。若者の運命が、このなんてことはないイベントで大きく変わっていくのだ。
指名されなかった選手の多くは、今年限りでユニフォームを脱ぐ。彼らにとっても一生忘れられない日になるのだと思う。

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