新庄剛志のような得体のしれない監督が出てくるのは、NPBの監督像がはっきりしていないからだと思う。
プロ野球の「監督」は、英語の「Manager」の翻訳だ。マネージャーというと日本では「お世話係」「裏方」というイメージが強いが、MLBのマネージャーはそうではない。

MLBのマネージャーは第一に「チームを率いてペナントレースを戦う」ことが求められる。もちろん「優勝目指して」ということになるが、すべての球団がそうではない。数年先の優勝を目指して選手の経験値を高めながら勝利を目指すマネージャーもいる。チームが解体モードで、何とか体裁を繕ってひどい負け方をしないように采配するマネージャーもいる。状況はいろいろ変わるが、マネージャーは「今ある素材を使って最上の料理を作る」シェフに近いと思う。

IMG_8395


では、選手の育成は誰が行うのか?マネージャーも若手選手を抜擢して経験値を高めるなど「育成」の一端を担うが、大部分はファームの指導者陣がこれを担う。激しい競争を勝ち抜いてきた若手を選抜し、さらに高いパフォーマンスを出させるためのアドバイスをする。そして選手を上のレベルに売り込む。
メジャーのマネージャーは、ファームの指導者のプレゼンテーションを受けて選手をピックアップするのだ。
もちろん、年俸などもからむので、そこにはフロントも絡んでくる。
GMなどフロント陣は、自軍の陣容を見て、売れる選手は売り、より安くて有能な選手を獲得する。マネージャーとも相談するが、選手の売買はフロント陣の専権事項になっているチームが多い。

IMG_5073


NPBの場合、監督が「戦う」ことだけでなく「育成」や「戦力強化」などを担う場合も多い。NPB球団のフロントが親会社から出向してきた部外者の場合も多く、専門的な判断をすることができないことも多いからだ。
MLBのドラフト会議では取り仕切るのはGMだが、NPBでは監督が中心の場合が多い。これなど象徴的だ。
そして春季キャンプでは監督が選手を直接指導したり、練習計画を立案することも多い。
さらにトレードも監督の意向で行われることがある。
育成に関しても監督の意向が強く働くことが多い。ファームのコーチたちは監督の人脈に連なることが多く、専門性よりも人的つながりで選ばれることが多いからだ。

NPBの場合、監督の職掌があまりにも広すぎて、何が本業なのかがわかりにくくなっている。
特に原辰徳、栗山英樹など長く監督を続けた「名将」と言われる指揮官は、チーム全体を背負ってしまうことが多い。

今の日本のプロ野球は、監督を座長とする「芝居の一座」のようだ。監督が何から何まで取り仕切っている。人間臭い組織だといってもよい。
NPBでも「純粋に戦うだけ」の監督が出てくればよいと思う。そして「育てるプロ」のコーチももっと出てくるべきだ。
そういう形で「それぞれの任務に特化したプロの指導者集団」になる方向で進化すればいいと思う。


1970年三輪悟、全登板成績【新人ながら200回超え&オールスター選出】

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!