このプレジデントの伊達公子の記事、上の本の抄出だが、今年の収穫の一つだと思う。
世界で活躍する日本人テニス選手が、日本でほとんど育たないシンプルな理由
伊達公子はまだ世界的なテニスプレイヤーが日本にほとんどいない時代に世界を志し、ランキング4位まで上り詰めたが、彼女の前に立ちはだかったのは「サーフェス(テニスコート表面の素材)の大きな違い」だったという。
彼女は大会ごとに異なるサーフェスに適応するために苦労するが、特にレッドクレーコートに適応するために彼女はプレースタイルを改め「ライジングショット」などの得意技を編み出した。
彼女は26歳で引退したが、12年後に復帰、このころになると世界はほとんどハードコートになっていったが、なぜか日本だけは「砂入り人工芝」のコートになっていた。つまり、日本のプレーヤーは世界とは異なる環境でプレーしているのだ。
そして伊達公子は「日本の女子テニスプレーヤーがテクニックはあるのに世界で活躍できないのは、日本のコート事情が一因なのではないか」と思うに至るのだ。

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「砂入り人工芝」は、足腰への負担が少なく、日々の管理やメンテナンスが楽で運営・施設の稼働率が比較的安定するといった理由から、1980年代半ばから民間クラブや地方自治体を中心に急速に普及した。しかしその環境変化によって、日本と世界のテニスの実力差は大きく拡がったというのだ。

私は「砂入り人工芝」について少しだけかかわったことがある。これの代表メーカーはダンロップ、つまり日本では住友ゴムで、商品名は「オムニコート」と言った。この広告にかかわっていたのだが、オムニコートはあっという間に日本のテニスコートのスタンダードになっていった。

テニスだけではなく、日本人は「人工芝」が大好きなのだ。今、NPBでは巨人、中日、オリックス、ソフトバンク、日本ハム、西武の6球団がドーム球場を本拠地にしているが、これらの球場はすべて人工芝だ。テニス同様、人工芝は管理コストが安く、劣化しない。
日本のスポーツ界ではそういう「企業の論理」が優先され、選手の論理やスポーツ本来の意義などは軽視される。
「天然芝に戻してくれ」といっても「いくらかかると思うんだ」と一笑に付されるだけだ。

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人工芝になったことで日本の野手はイレギュラーへの対応が難しくなり、スピード感もなくなった。MLBではほとんどの球場が天然芝でプレーする中で、日本人内野手はMLBでほとんど通用しなくなった。

伊達公子のこの記事は「スポーツ二流国」日本の現状を我々に突きつける。
競技の運営者は口を開けば「選手のため」というが、実際には「採算が合うのなら」という但し書きがつくのだ。

甲子園にしたところで「金がかかりすぎるから」余裕のある日程もリーグ戦も組むことができない。

日本のスポーツ環境はずいぶん貧しいと言わざるを得ない。


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