昨年暮れに、小学生がNPBのジュニアトーナメントで、軟球を神宮球場のスタンドまで飛ばしたことが話題になった。バットはビヨンドマックスレガシーだった。
筒香嘉智も球場内で見ていたようだが、先日、このことを聞くと「あれは信じられない」と言った。
このレベルからでも「芯で打つ」バッティングをしなければならないのが、ビヨンドマックスのバットは「強く振れば飛んでしまう」のだ。子どものパワーやフォームで打球が飛んでいるのではなく「バットが打たせている」のだ。
このバットは、ドーピングに近いような代物だと言える。

しかし一方で、軟式野球だけについて考えれば、このバットは必要なものではある。最近の軟式野球界は「貧打」が続いている。軟式球は反発係数が低いため、フルスイングしても打球が飛ばない。だからなかなか点が入らない。
2014年8月31日第59回全国高校軟式野球選手権大会準決勝の中京高校対崇徳高校の試合では、サスペンデッドゲームを繰り返して延長50回で決着がついた。このゲームだけでなく、軟式野球はロースコアで延長戦になることも多かった。

それを改善するために、2017年から軟式球はA号、B号を統合してM号とし、大きさで2ミリ重さで3グラム大きくなり、バウンドの高さは15%低くなった。公式球に大きさ、重さ、反発係数も近づいたのだ。



一方で貧打戦を解消すべくバットの開発も続いた。全軟連がミズノに対して「よく飛ぶ軟式バットの開発」を依頼。打球はバットに当たってボールが変形することで飛ぶが、軟式球は変形の度合いが低い。そこでバットの側を変形させることで反発係数を生むことを考え、バットのFRP本体の打球部にエーテル系発泡ポリウレタンを使用したビヨンドマックスを開発。これによって8%飛距離が増した。

ここから開発がさらに進み、今では金属バットの打球部にポリウレタンを使用し、普通の金属バットより23%も打球が飛ぶ製品もできている。

軟式野球のことだけを考えればこれは朗報だ。また草野球レベルでは、40歳、50歳のおっさんがビヨンドマックスを振り回すことで飛距離を取り戻すのは結構なことではある。

しかし小中学校の軟式野球は、高校以後の硬式野球に対する「エントリークラス」でもある。この時期の野球少年がビヨンドマックスで飛ばす技術を身に着けてしまうと、高校での硬球+金属バット、大学、プロ、社会人の硬球+木製バットと、2段階の大きなギャップに苦しむことになる。

「うちの子は大人になってまで野球はしないのだからそれでいい」という親もいるだろうが、こういう「段差」を作ってしまうのはいいことではない。

大人がそういう問題について、しっかり話し合って解決すべきだろう。

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