日本野球の改革についていろいろな記事を書き、ブログにも書いている。また志を同じくする人と意見交換も頻繁に行っている。コロナになってからリモートが普及したので、会わなくても情報交換は増えた印象だ。NPBから大学、高校の指導者、大学の研究者、ジャーナリスト、医師、理学療法士などと話をしている。
しかしながら、ミーティングなどでいつも話題になるのは「本当は、この場にいない人にこの話をしたいんだよね」ということだ。少年野球で言えば、子どもの健康への配慮、球数制限、勝利至上主義を排除した指導など、いろんな問題を議論しているが、少年野球の指導者の中にも「こんな議論があること」さえ知らない人がたくさんいる。理解さえすれば前向きに対応すると思うのだが、知らないし、その素地もないから、昔ながらの指導法でやっている人もいる。また、中途半端に情報を耳にして「変なこと言ってやがる」と思っている人もいる。そういう人と議論をすべきだと思っている。

私は東洋経済オンラインで「小学生の盗塁問題」について書いた。

「少年野球は盗塁禁止に」という声が出る背景事情

「盗塁禁止」議論のウラにある"子どもの野球離れ"

学童野球の現場で、強いチームが弱いチームに盗塁を仕掛けまくって「無限ループ」状態を作って、圧勝するチームが後を絶たない。

これによって弱いチームの選手や保護者は、野球への熱意を失ってしまう恐れがある。
また、強いチームの選手も「投げる、打つ」と言う野球本来の魅力とは異なる「勝利至上主義」に走ってしまう恐れがある。

「盗塁の無限ループ」が起こる背景には、中学生以下の競技人口の減少、とりわけ学童世代の競技人口が激減し、低学年の子や野球初心者など「盗塁にまだ対応できない」子供まで試合に出ていると言う現状がある。

指導者の中にはこうした事態を憂慮するのではなく、実力差があるのをいいことに「楽に勝つ」ことを選択する人がいる。長い目で見れば「自分たちさえ勝てばいい」と言う考え方は、地域の野球の衰退につながる。

こういう話をしてきたわけだ。

たまたまネットを見ていると、こういうブログを見つけた。

【少年野球】小学生が盗塁禁止なんてバカげてる!

少年野球指導者で「お父さんのための野球教室」というグループに属している人だ。

この人のブログを読み返してみると、素晴らしい指導者であることが分かった。
トーナメントよりもリーグ戦を重視していること、「試合に出ることの大切さ」を訴えていること、試合や練習での声出しを否定していることなど、まさに少年野球に必要なことをほとんどすべて紹介している。

で、あるのに盗塁禁止の議論については

本当にバッカじゃねぇのって思いますよ(笑)

となってしまう。こういう人に真意を理解してほしいと思うわけだ。

この指導者は「盗塁され放題になったら、走者を一切無視して打者だけでアウトに取ると考えればいい」と書いているが、これは「本質的な解決」ではなく、対症療法でしかない。

「盗塁無限ループ」で勝つチームが増えれば、少年野球をしたいと思う選手、親が減る。ひいては野球界が衰退することにつながりかねない。実際多くの地域で、そうなりかけている。盗塁だけの問題ではないが、それに象徴されるようなモラルハザードが起こっている。
指導者は「自分たちが勝つこと」だけを考えるのではなく、少年野球界全体が「より良い方向」に向かうように、努力をする必要がある。そうしないと自分たちの将来もない。

この指導者はおそらくスポーツマンシップについて学んでいないと思うが、「小学生の盗塁」の問題も、今存在する野球界の様々の問題も「スポーツとしての野球」が内在している問題であり、スポーツマンシップへの理解を深める過程でもっと深く、野球の問題について考えてほしいと思う。

私はこのブログの内容を、この人に送って意見交換をしようと思っている。

IMG_7196



2021年山本由伸、全登板成績【投手五冠にリーグ優勝に金メダル】

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!