プーチンの侵略は、新たな冷戦に入ろうとしていた国際社会を劇的に変えた。アメリカはトランプの時代に西欧諸国との連帯、結束に溝ができ、むしろロシアなどとの距離が縮まったが、今回のプーチンの愚挙によって、西欧諸国、自由主義圏が一致団結してウクライナを支援する動きが整った。
EUを離脱したイギリスも、EUとは距離を置いていたスイスやスウェーデンも、ロシアに対する非難では声をそろえた。
日本では、れいわ新選組を除くすべての国政政党が「ウクライナ侵略非難決議」に賛成票を投じた。れいわは「逆張り」をして存在感を際立たせようと思ったのだろうが、政党としての未熟さ、幼児性を露呈した形だ。

中華人民共和国は、今回の事態を慎重に見極めていることと思われる。
まず、盟友ロシアの予想以上の弱さと戦略性の欠如。ロシアはおそらく「クリミア半島と同じように、ウクライナも簡単に落ちるだろう」と多寡を括っていたのだろうが、今回はアメリカが高い精度でロシアの進行を予測し、NATO各国と共に武器や物資の援助をしていた。今回の戦争はロシア側の攻撃シーンだけが世界に流れ、ウクライナの反撃シーンはほとんど露出しないが、これはウクライナの装備など手の内を見せないためだろう。対照的にロシアは物見遊山気分で侵攻して、1週間がたっても主要都市を落とすことができないまま停滞している。おそらくはオリとパラの間に作戦終了をもくろんだのが、全くの当て外れになっている。
中国は、盟友の予想外の失態に深く失望し、恃むに足らずという印象を持ったと思われる。

さらに、中国は、専制国家の侵略行為に対して、世界が結束することを目の当たりにした。ロシアが流すフェイクニュースはいかにもお粗末で、まともなリテラシーのある国をだますことは全くできなかった。ロシアにとってのウクライナは、中国にとっての台湾であろうが、中国は台湾進攻に際しては蔡英文政権の転覆、それが無理でも弱体化をしたうえで武力を行使すると思われる。また、日本や韓国など近隣諸国に「親中派の政治勢力」を醸成する動きも活発化するだろう。岸田政権は「親中派」だとする声があるが、日本の経済界が中国に依拠しているのだから、そこに支持基盤がある自民党が中国に配慮をするのは当然だ。ただ政治体制としては自由主義陣営にあることを堅持するはずだ。中国は「親中派勢力」を拡大する工作を日本国内で行っていると思うが、おそらくそのターゲットは「維新」ではないかと思っている。大阪府ではここ数年、公立図書館で習近平関連の著作を展示する催しが何度か開かれている。私は見に行ったが、まことに不気味なものだった。維新が推進するIRのメインターゲットも中国なのだ。
中国は、ロシアの体たらくを見て「ああならないように、準備しよう」と思ったはずだ。そしてロシアではなく自由主義陣営に「親中派」の橋頭保を築こうとするだろう。

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ロシアは電撃作戦に失敗し、世界から孤立した。ウクライナが降伏しないまま時間が過ぎれば過ぎるほど、ロシアの評価は下落する。原発の占拠はロシアにしてみれば「核の脅し」なのだろうが、前代未聞のこととして、世界中から非難を浴びた。
停戦交渉でもウクライナはロシアの要求する「武装解除」「中立化」は絶対に飲まないだろうから、戦争をやめるためにはロシアは譲歩を迫られる。譲歩することは「負け」を意味する。
ならば、と、戦術核を使用すれば、ロシアは「ナチス同然」という烙印を押され回復不能なダメージを受けることになる。

まさに「引くも地獄、進むも地獄」、ロシアは中国あたりに仲介の労を期待したいのだろうが、それも容易ではない。

ここ1か月で、世界情勢は大きく変わるのではないか。


NOWAR


2021年山﨑福也、全登板成績

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