世代的に近いので、なんとなく親しみを持っていたのだが、山下泰裕は「昭和のスポーツ」を体現する存在という歴史的評価になりそうだ。
祖父の手ほどきで柔道を始めたものの、祖父は山下をプロレスに売ろうと画策していたともいわれる。
高校の途中から東海大相模に転校。この時期、東海大グループはスポーツに力を入れて大学のステイタスを上げようとしていた。1歳下の原辰徳と山下泰裕はその広告塔のようなものだった。

東海大に進学し、無差別級の第一人者となる。モスクワ五輪ではボイコットに涙をのんだが、ロサンゼルス五輪では足の負傷にもかかわらず決勝でラシュワンを退けて金メダル。足を引きずりながらの栄冠は、ラシュワンのスポーツマンシップあふれる試合ぶりと共に世界に感銘を与え、国民栄誉賞を獲得した。


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大学院を出て山下は東海大の教員になるとともに、国際柔道連盟でも要職を歴任、さらにはJOCでも主要な役職を務め、現在はJOCの会長、全柔連会長、国際柔道連盟理事、さらに東海大学教授、副学長。
「位人臣を極めた」感があるが、山下泰裕が日本のスポーツ界のトップだと思う人はそれほど多くないのではないか。

オリンピックメダリストなど、国際的に活躍したアスリートは引退後、広い視野、豊かな経験を背景に「アスリートの将来」「スポーツの使命」などについて進歩的な発言をして共感を得る。
スポーツ庁の2代の長官、鈴木大地、室伏広治がそうだし、為末大などもそうだ。
こうした人たちは、ただ「勝つだけ」のスポーツを否定し、スポーツの公益性、公共性を意識した発言をする。アスリートの暴力、パワハラ事件が発生すれば、それを強く非難するコメントを発したりする。

しかし山下泰裕は、そういう発言はしない。常に体制側であり、政治家、権力に配慮した立ち位置にいる。わたしはときどき、この人は日大の田中英壽の弟子だったっけな、と思ったりする。
東海大の創設者、松前重義は高級官僚出身ながら徹底した反体制派で、戦後は日本社会党のパトロンだったが、以後の東海大はすっかり「守旧派」になった印象がある。

今回のロシア、ウクライナ侵攻に際して、JOCがロシアに明確な非難の声を上げていないのは、山下泰裕がトップであることと無関係ではないだろう。
山下泰裕はプーチンに黒帯を進呈するなど親しい関係にある。国際柔道連盟はプーチンの名誉会長職を停止し、黒帯をはく奪したが、上下関係を大事にし、権力者に阿ることが多い日本武道の体質を受け継ぐ山下泰裕はプーチンを非難したり、厳しい態度に出ることはできないだろうと思われる。

どっちつかずの態度に終始し、世間の動きを傍観するのではないか。

すくなくとも未来のスポーツにとって、JOCの山下泰裕会長は、ほとんど役割を果たさないことと思われる。守旧派の砦として、変わりゆくスポーツの世界の障壁になり続けるだろう。



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