「鎌倉殿の13人」に影響されて「平家物語」を読み返している。小学校の時からいろんな版で呼んできたのだが、もう原典に挑むのは難しいので、吉村昭の現代語版を改めて読んでいる。
吉村昭は私が最も尊敬する作家の一人だ。とにかく文章が明晰で、しかも端正で美しい。その筆致で描かれた「平家物語」は、目を見開かせるほどわかりやすい。登場人物の輪郭も非常にはっきりしている。

しかしそこに書かれているのは、源氏物語のような「情念の物語」ではなく「戦争」である。
平安末期の政争が、戦争へとつながり、貴族や武士、庶民などが大量に死んでいく。戦端が開かれるたびに何百、何千という人々が殺され、首を切られ、自殺し、焼かれていく。
勇気ある人も、卑怯な人も、美しい人も、偉躯を誇る人も、たおやかな人も、刃と炎の前にはみんな、あっけなく死んでいくのだ。
要するに平家物語は「殺戮の過程を描いた物語」であり、人間の愚かさ、弱さを書いているのだ。

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読みながら現在進行形で続いているウクライナ侵略を思わないではおられなかった。
この度の戦争でも、たくましいアスリートが戦争に身を投じ、祖国のために戦おうとしている。
各国の義勇兵もウクライナに入っている。彼らも勇壮な気持ちを抱いているのだろうが、行われるのはスポーツではなく「殺戮」だ。その厳然たる事実に正対しなければならない。

「平家物語」もそうだが、戦争は、時間や距離を遥かに置いて「遠望」すれば、あたかも美しいような、勇ましいような印象を抱くが、所詮は「殺人」であり、目の前で見れば、頭が砕かれ、臓腑がえぐられ、五体が飛び散る、屠殺じみた現場でしかないのだ。
勇ましくこれを語り、美化するのは、戦場からはるかに遠い人々であり、安全な立ち位置から戦争をあたかもスポーツであるかのように語るゆがんだヲタクである。

プーチンは己の保身のために人々を「殺戮の巷」に送っている。すでに「国際政治」の枠組みを逸脱してしまった。
彼を失脚させ、ロシアの体制を一変させることに、日本を含む国際社会は全力を注がなければならない。


NOWAR


2021年山﨑福也、全登板成績

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