年中行事にはなっているが、阪急阪神ホールディングスの株主総会での、株主質問、何とかならないかと思う。

毎年、決まって阪神タイガースに関する質問が出るのだ。
確かに株式会社阪神タイガースは阪急阪神ホールディングスの傘下ではあるが、このHDは、阪急電車・阪神電車・阪急阪神不動産・阪急交通社・阪急阪神エクスプレス・阪急阪神ホテルズという6社の一次子会社を持っている。阪神タイガースは阪神電鉄の連結子会社にすぎない。

阪急阪神HDの株主総会で議論すべきは、まずは社会のインフラたる鉄道事業の見通しであり、あとは流通事業、不動産関連事業などについてのはずだ。
新型コロナ禍で、電鉄会社は軒並み厳しい経営環境に陥っている。コスト削減と交通インフラの両立のためにどんな施策を打ち出すのか。経営陣には厳しい課題が突き付けられている。

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またネット社会の進展によってリテールサービスは劇的に変化している。これまで「リテールの頂点」にいた百貨店は、ブランドに胡坐をかいている中、凋落の一途をたどっている。Eビジネスへの転換も立ち遅れ、顧客は「百貨店で商品の実物を見て、ネットで購入している」と言われている。
またコロナ禍で瀕死の状態にある旅行業なども懸念されるところだ。

株主が一番に心配すべきは、阪急阪神HDの柱になっているこれらの事業の行く末である。電鉄系の事業はとかく「線路を敷いて安全運転」しがちだと言われる。私もバブル期に阪神電鉄のホテル事業などの仕事の企画を担当したが、とにかく「無難に」「つっこまれないように」仕事を進めたいという体質だった。

変革が必要な時期に、どのような経営方針を打ち出すのか、それが何より重要なはずだ。

しかるに株主総会の貴重な時間を割いて、
「(タイガースの)矢野監督がなぜ辞めると言ったのか。プロ野球の正月にあたるキャンプインの前日に辞める、あんな自分勝手なことあらへんでしょ。さらにキャンプ中に予祝で胴上げをした。社会的な常識のない監督に役員はちゃんと言ったのか?次誰になるか気になるでしょ」
という質問がされているのだ。
HDの株主総会で、傘下の孫会社の中間管理職の人事についての説明が求められているのだ。

さらには
「なぜ甲子園でたこ焼き、焼きそばは販売されているのにイカ焼きが販売されないのか」
という質問もあった。

こうした呆れた質問が毎年行われるのは、経営の根幹を突くような厳しい質問を回避したいHDの経営陣の意向を反映しているのではないか。総会屋よりたちが悪いのではないか。
ましてやこのグループにはタイガースとは縁のない阪急電車も傘下にいるのだ。

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貴重な株主総会の「株主質問」の時間を割いて「タイガース」はては「イカ焼き」、どうでもよいではないか。時間の無駄ではないか。

年中行事と化しているのでスポーツ紙は嬉々として書き立てるが、日本の資本主義社会のレベルの低さ、株主の幼稚さを象徴するようで、毎年、あきれ返っている。


NOWAR


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