トラックマンもラプソード、ホークアイも、「選手個々の能力アップ」のツールとしては大差がない。むしろカメラで画像を撮って分析する分、ラプソード、ホークアイの方が「リッチだ」ともいえる。
決定的な差は、もう一つの機能、「試合における戦術、戦略面への活用」でつくのだ。

まず、ラプソードはハンディな「練習用」しかない。大きなエリアの選手の動きを把握することはできないのだ。だから試合でトラッキングシステムのデータをとろうと思えば、ホークアイを併用することになる。ホークアイは反対に球場設置型のものしかない。

試合におけるトラッキングシステムの活用とは端的に言えば「自軍投手の状態の把握」と「相手投手、打者の能力、状態の把握」だ。

自軍投手の基本的な能力は、ブルペンや練習試合でも把握することができるが、本番である試合で刻々と変わるコンディションをオンタイムで把握するのは重要だ。佐々木朗希の投球はロッテ球団で逐一把握している。パーフェクトのまま8回で降板したときも、トラックマンのデータを参考にしたのではないかと思われる。

移動可能なトラックマン


一方、相手投手の能力は、試合以外では把握できない。試合での投球を計測することで相手投手の能力を測定することができる。また球威や球速、回転数の変化なども捕捉できる。また打者の打球速度や回転、起動なども把握できる。

そこまでの能力はトラックマンとホークアイで大差はない。むしろカメラ画像でデータがとれる分、守備能力の捕捉などではホークアイの方が優れている部分もあるのだ。

決定的な違いは、トラックマンを使っている球団は「ほぼすべてのチームの投手、打者のデータを活用できる」のに対し、ホークアイを使っている球団は「自軍と、自球団のホームゲームでのデータしか使えない」ということだ。

球場設置型のトラックマンは「販売していない」。トラックマン社が本拠地球場の許可を得て球場に設置し、球団はトラックマンの使用料を支払う。トラックマン機器のデータは、トラックマン社のスタッフがデータ化し、契約している球団に提供しているのだ。

これ、見える化するとこうなる

Trackman-2022


トラックマンと契約している球団は、自軍のホーム、ロードの試合のデータだけでなく、契約している10球団の全試合のデータ、さらにはホークアイと契約している2球団のロードゲームのデータも入手することができる。

これに対しホークアイと契約している球団は自軍のホームゲーム以外のデータは入手できない。トラックマンを導入するチームとロードで対戦するときは相手チームに自軍のデータを把握されるが、そのデータは自軍には提供されない。

情報量でいえば数倍の差がついてしまう。ホークアイと契約する球団は、自軍の情報でさえも半分しか入手できない。

この極端な情報格差をどう見るか、これが大きなポイントなのだ。





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