トラックマンと契約する球団と、ホークアイと契約する球団では大きな情報格差があることを説明した。
今、ホークアイはSONYの傘下にあるが、NPBでの市場を拡大すべくトラックマンと競合しているわけだ。そしてようやく2球団と契約したのだが、スケールメリットと言う点でトラックマンには大きなアドバンテージがある。
しかしトラックマン契約球団とホークアイ契約球団では、情報格差だけでなく、大きな「本質的な差」がついている。

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トラックマンを使用している10球団は、入手できる情報量は同じだ。だから、入手した情報をいかに活用するかが勝負になる。古手の球団は導入して6~7年になるからトラックマンの活用の仕方をそろそろ理解し、独自のデータを選手に提供するようになっている。

ただ、トラックマンなどトラッキングシステムは「勝利」にそのまま結びつくというものではない。投球の「質」「コンディション」を把握するものだから、それをいかに作戦に結び付けていくかも問われている。
さらに言えばトラックマンを活用することで「故障」を事前に把握することも可能になる。資産である「投手」「選手」の活躍期間を長くすることに役立てることもできる。

トラックマンを導入した球団は、専任のアナリストを雇用し、データをより積極的に役立てようとする。野球部でデータを担当していたような大学生、大学院生が球団職員になっている。

数年前の話だが、ある球団の情報担当と話をしていて、本拠地で行われていた中学野球の大会でトラックマンのスイッチを入れたところ、ある投手がとんでもない回転数だったと話してくれたことがある。この球団では投手のポテンシャルをデータで把握する習慣ができていたのだ。

トラックマンを導入していない2球団はそれぞれ事情はかなり違う。

一つ目の球団は、これまでトラックマンを使用していてホークアイに乗り換えた。理由ははっきりしないが、ホークアイの情報に魅力を感じたのか。あるいは11球団で共有していたトラックマンの情報を活かし切れていなかったのか。いずれにせよ、トラッキングシステムを情報分析に活かした「経験あり」である。

なお、この球団の本拠地ではアマチュア野球の大会も行われる。アマ野球の団体がトラックマンを導入したために、本拠地球場にはトラックマンとホークアイの両方が設置されている。プロが使うときはトラックマンのスイッチを切り、アマの時だけトラックマンを使っている。

もう一つの球団はこれまでトラックマンなどトラッキングシステムを導入してこなかった。監督や選手などが「導入してほしい」と要求したが「うちはいらない」と断り続けた。アナリストらしき専門家もいないようだ。なぜ今年になってホークアイを導入したのかはわからない。ホークアイの方がトラックマンより高価だとされるが、あるいはホークアイの会社が、シェアを拡大するために「大サービス」したのかもしれない。
ただ、この球団は試合用のトラッキングシステムを使ったことがほとんどない。使いこなせるのか、そして上がってきたデータを首脳陣が理解できるのかは未知数だ。

MLBではトラックマンに画像システムを組み合わせたスタットキャストをMLB機構が導入し、全30球団でデータを活用している。この時点での情報格差はない。勝負は「共有した情報から、いかに有益なデータ引き出し、作戦や選手の育成に役立てるか」の勝負になっている。

NPBもいずれそうなるかもしれない。ただ「情報化」に関してはすでに意外なほど、大きな格差が広がっているのだ。


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