保険外交員として上がり込んだ資産家の女性と養子縁組をしたうえで殺害し、保険金をだまし取った28歳の男が今日、自殺を図った。

心肺停止状態が続いている。

この容疑者は関学高校時代はアメフトのトップ選手でクオーターバックで活躍。関西学院大に進んでからは怪我のためスタッフにまわったが、アナライジングスタッフとしてチームに大いに貢献したという。

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大学卒業後は外資系の大手生命保険会社に勤務したが、抜群の体格とスポーツマンらしい容姿を武器に、多くの女性顧客と契約するなど実績を伸ばしたが「知らないうちに別の契約もしていることになっている」など、多くの苦情があり退社。
別の保険代理店に就職して同様の危ない営業活動で実績を伸ばし、大阪府内の資産家の女性と知り合って、養子縁組をして資産を乗っ取るべく女性を殺害したという。

プライベートではタワーマンションに住み、ランボルギーニを乗り回し、高級すし店に出入りする。女性関係も派手で、いわゆる「豪遊」を続けていた。結婚したが遊びは止まらなかった。

絵にかいたような「お手軽ベンチャー志向」の男だったと言えよう。
私はIT系ベンチャー企業にいたことがあるが「金儲け」「女」「豪遊」しか頭にない若者をたくさん見てきた。

その多くが「体育会系」で、上の人間のお覚えがめでたく、下への当たりが強かった。
こういう人間と話していてしみじみ思ったのが人間としての「感情のひだ」の少なさだ。「勝つ」か「負ける」か。「金持ちになる」か「貧乏になる」かのニ択しかなくて、深く考えることなく直情径行的に動く。

これまでのスポーツ界は、「上の言うことは何でも聞く」ような一兵卒タイプと、「勝つため」なら何でもするお手軽ベンチャータイプをたくさん生んできたのだと思う。

世の中には「白黒」だけでなく、無段階にグレーもある。そして勝者と敗者だけでなく、その中間にたゆとう人もいる。彼らも人間であって、生きる権利があるし、彼らとも手を携えていかなければならない。
その自明のことに、この男は28歳にもなって気が付かなかったのだろう。
スポーツは勝利への原理を教えるだけでなく、相関関係を基本とした「社会の複雑さ」を教えないといけないだろう。

高校時代は一流選手だったのが、大学で裏方に回ったことが彼の中には大きなわだかまりになっていたのではないか。実社会でリベンジを果たしたい。リベンジとは彼にとっては「金」であり、「女」であったと。
誠に単純で、素朴ではあるが、今の世の中では、彼のようなシンプルな行動原理を持つ人間は、一時的にせよ成功を収めることがあるのだ。

しかし悪事がばれてつかまった。「あ、だめだ、死のう」と思ったようである。その最後も、きわめて単純なものになるかもしれない。


NOWAR


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