YoutubeやSNSを見ようとするたびに「ユダヤ人が大昔に日本に来た」とか「日本人のルーツは大陸にはない」とか「中国、謀略の歴史」とか、怪しげな広告動画がポップアップするようになった。


たまにクリックしてみると本の案内につながる。もっともらしい肩書の「学者の大先生」の本だ。しかし内容は、荒唐無稽としか言いようがない。

30年ほど前に「トンデモ本」と言うのが流行った。疑似科学(似非科学)を真正の科学であると主張したり、陰謀論やオカルトを本気で主張している本だ。
これらの本を作者の意図とは別の文脈で読むことがおもにSFファンの間ではやった。『トンデモ本の世界』はベストセラーになり、「と学会」という集まりもできた。
私もずいぶん楽しませてもらったが、今、ネットで出回っているのは昔の「トンデモ本」と同じレベルのものだ。しかし、書いている人間の肩書が違う。

東北大学名誉教授・ローマ大学客員教授、田中英道

国際政治学者・藤井厳喜

国際派ジャーナリスト 丸谷元一

元特命全権大使キューバ国駐箚、防衛大学校教授馬渕睦夫

みたいな顔ぶれである。みんな立派な肩書だが、変なことばかり言うので、学界や一般のメディアでは相手にされなくなっている人たちだ。

田中英道は美術史家だったが、最近は「ユダヤ人埴輪」が出たと言って、古代ユダヤ人が日本にやってきたと言っている。

藤井厳喜は国際ジャーナリストだが、太平洋戦争での日本人の戦争犯罪は「すべてなかったこと」だと主張している。丸谷元一もにたような言説だ。

馬渕睦夫は、以前にも紹介したがコロナもワクチンもディープステートの陰謀だと言っている。

言っている内容はおなじみのトンデモライターの船瀬俊介、内海聡、鳥集徹、飛鳥昭雄などと五十歩百歩だが、肩書が重たいので値打ちがあるのだろう。

馬淵を除く3人は「ダイレクト出版」と言う版元から本を出している。この出版社が、YoutubeやSNSに大量に広告を出しているのだ。

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ダイレクト出版は大阪の会社だが「ダイレクト・マーケティング」と言う手法でモノを打っている。ネット広告で直接読者を獲得し、そこに集中的に商品を打っていく手法だ。これで大成功を収めているようだが、本の中身は陰謀論、ネトウヨが喜びそうな「日本は間違ってない話」などなど。売れれば何でもいいと言う感じだ。
公式サイトでは1万円以上する情報商材もたくさん販売している。出版社の顔をしたネット通販会社と言う感じか。

以前なら「と学会」の餌食になりそうないい加減な本ばかりだが、昨今は訴訟を恐れて「トンデモ本」は刊行されていない。

こういうメディアを通じて、大層な肩書を信用してとんでもないフェイク本を読んで、それを信じ込む人がたくさんいるのだと思うと、寒気が走る。

学者、ジャーナリストの中にもこの手のおかしな人はたくさんいるのだ。
ヘンな本を買って読んでしまうのは、時間と資源の無駄なのだから、例えば最近どんな発言をしているか、まともな出版社から本を出しているのか、どんな論文を書いているのか、などを調べてから購読すべきだと思う。


NOWAR


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