この本、数時間で読了した。文章が読みやすいこともあるが「内部告発本」にも拘らず内容が痛快だった。
谷口真由美は近鉄ラグビー部コーチの娘として生まれ、花園ラグビー場のメインスタンドの中にあった近鉄の寮で育った。
長じて法学者となるが、2019年6月に日本ラグビーフットボール協会の理事へ就任した。
ラグビー界はワールドカップの成功に湧き、プロリーグ創設へと動いていた。
谷口真由美はその旗振り役として理事に選ばれ、法人準備室長と審査委員長を兼務したが、実情は、スポーツ庁が各スポーツ団体への「女性役員の登用」を求めたのに対し、ラグビー界と縁のあった谷口を「お飾り」として役員にしたのであり、彼女が実務を仕切ることは夢にも思っていなかった。

しかし彼女と同時期に登用された4人の女性理事は会議でもズバズバと質問した。男社会のラグビー界は、一握りの幹部が物事を決め、理事会などは「シャンシャン総会」みたいに終わらせるのが常だったが、谷口らの加入でそうはいかなくなった。

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森喜朗が2021年2月のJOCの臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」と発言したのは、ラグビーフットボール協会の会議の状況について、協会幹部が森にもらした「愚痴」がきっかけだったと言う。

森喜朗はラグビー協会の若返りを期して自らが身を引き、清宮克幸を中心に据えた。その清宮が谷口を協会に引き入れたと言うストーリーではあった。

しかし清宮の改革は守旧派の抵抗によってとん挫。清宮と言う後ろ盾を失った谷口も、次第に行動の自由を奪われ、最後は協会を追われる。

清宮や谷口を追いやったのは「タテ社会」で「親会社」「既存の秩序」に従順な「おっさん」の同調圧力だった。
今や日本は「斜陽国」であり「先進国からずり落ちよう」としているが、その根底には「自分が活きている間は物事を1ミリも変えたくない」と言うおっさんが、日本各界の中枢にいることがある。
ラグビーだけでなく、野球界も同様だ。

谷口が痛快なのは、自分の支援者であり、引き立て役であった清宮克幸の独断専行についても遠慮なく批判していることだ。

私にも「おっさんの血」が流れている。体制批判はためらうことなくするが、自分と同じ考えの人、自分の支援者に対しては批判の切っ先が鈍る。私も日本の「おっさんの序列」につながっていることを痛感する。

しかし世の中を変えるためには、あらゆる忖度を排除して、言うべきことをずけずけ言う「おばちゃん」のスタンスが本当に大事なのだと思う。

女性の社会進出とは「おっさんの牙城」を破壊することであり、そこに「おばちゃんの旗」を建てることではないかと思う。



NOWAR


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