昨夜、恐らくは新たに読者になったであろう人と、坂本が「やったこと」について議論した。大変疲れたが、昭和の時代的、そして体育会系の人の「人間観」「価値観」にじかに触れたような気がした。
今回のスキャンダルは「坂本勇人が結婚する気のない交際女性を、妊娠させて堕胎させ、示談に持ち込んだ」と言う話だ。
この話を女性が、知人を通じて文春に話したことから、騒ぎになったわけだ。

昨夜、私と議論したコメンターは
「女の方から大スターの坂本に言い寄っていったのだから、責任は女の方にある。しかも示談にして金は払ったのだから、坂本は悪くない。あるいは悪いにしても、もう済んだことで非難される筋合いはない」と言った。
さらに「たかがスポーツ選手なんだから、社会的責任もへったくれもない」

と言う意見のようだった。元巨人の笠原将生などと同じく、身も蓋もない言い種である。

昔から、多くのプロ野球選手は「近づいてくる女性は“お持ち帰り”しても構わない」と思ってきた。
私は今年6月、斉藤和巳さんと会食したが、斜め前でグラスを傾ける斎藤さんは同じ人間とは思えなかった。190㎝の筋骨隆々とした体躯、白Tを通してすごい筋肉の盛り上がりが見えた。店を出ると数人の女性が駆け寄ってきた。ま、そういうことなんだろうなと思った。

こういう関係では男性が圧倒的に優位だ。避妊したくないと言えば、女性は従わざるを得ない。「自分の体は自分で守らなければ」と言うことでいえば、女性がアフターピルを飲むのも仕方がないかもしれないが、こういう男女関係は正常ではない。パートナーに優しくない男性は最低だ。

きれいごとを言うようだが、どういう関係であっても、男女は、人間は平等であり、互いの健康や人間としての尊厳、人権を相互に尊重しなければならない。
「尻尾振って寄ってきたんだから、何されたって文句言えた義理かよ」は、まともな人間の言うことではないし、今の社会で許されることではない。

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こういう価値観を持つ男が今も少なからずいる一方で、同じ世代でも、同じプロ野球選手でも、そんなことはしない選手はたくさんいる。
坂本と小学生時代からのチームメイトの田中将大は、坂本以上の大スターであり、MLBでも成功を収めたが、彼はアイドル好きで、女性タレントと結婚したが、その手の「鬼畜エピソード」は絶えて聞いたことがない。きわめて「まとも」な感覚を有していると思われる。

清原和博は「うまい酒飲んでええ女だくために野球選手になったんや」と言ったと言う。「昔は、そういう選手は“豪快”“遊び人”としてもてはやされた。男はみんなそんな風に思っていたんだ」という人もいるかもしれないが、女性の健康や尊厳を踏みにじり、人権を毀損するような男性は、今も昔もそれほど多くはない。ただ、昔はそれがさも「武勇伝」のように喧伝され、一部の人がもてはやしていたのだ。その時代から多くの人は「まとも」だった。これは強調しておきたい。だから日本社会は平和な形で維持されてきたわけだ。

今の世の中は、コンプライアンス意識が高まり、人権や女性の権利などを尊重する意識も高くなった。だから、昔は「やんちゃ」「遊び人」で済まされた一部男性の行状が「違法」「非人間的」「女性蔑視」「人権軽視」と思われるようになったのだ。
もちろん、今の世の中には問題は山積しているが、それでもいい世の中になってきたと思う。

「坂本がなぜ叩かれるのかわからない」という人は、自身の感覚、価値観が世の中の趨勢とはかけ離れつつあることを知るべきだ。
今は、力の強い者、金のあるものが「何をやっても許される」時代ではない。


NOWAR


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