日本の「凄い打者」がMLBに挑戦して、あまり良い成績を挙げられず「ふつうの打者」になってしまう懸念について書いてきたが、懸念はそれだけではない。
大部分の選手は、MLBでのキャリアを経て、NPBに帰ってきてからも以前の「凄い打者」には戻らないのだ。

データで見る。MLBに昇格できなかった中島宏之(裕之)も加える。

NPB-MLB-NPB


MLBに渡る選手は大谷翔平(23歳)、西岡剛(26歳)、鈴木誠也(27歳)を除くと28歳から32歳、キャリア10数年、もっとも脂の乗り切った盛りでアメリカに渡る。成功した選手は少ないが、それでも最低3年はMLBでプレーしてNPBに復帰する。

復帰のときは争奪戦が起こることが多く、元の球団に復帰するとは限らないが、復帰してからの成績が、復帰前と同等であることはほとんどない。
復帰後1000本安打を打った選手はいない。3割をマークした選手もいない。とりわけ「長打力」は大きく減退している。
端的に言えばNPBの「凄い打者」はMLBで「ふつうの打者」になるが、NPBに戻ってからも「ふつうの打者」のままなのだ。

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大きな原因は「ピークの数年」をMLBで空費すること。ピーク直前にアメリカに渡り、ピークを過ぎて帰ってくるのだ。
もう一つは「環境への適応」の問題。MLBに移籍してその環境に適応するのに苦労をする。NPBに帰ってきてまた環境変化に対応しなければならない。二重の「環境変化」にうまく対応できないのだ。
またMLB在籍中にケガ、故障をして完治しないままに戻ってくることもある。
さらにメンタルの問題。失意のうちに帰国して、以前のモチベーションが取り戻せない選手もいる。

いろいろあって帰国してからも「残念な成績」に終わる選手も多い。渡米の前後の成績を合わせて2000本を打ったのは松井稼頭央と中村紀洋だけ。
Number Webに書いたが、私は松井稼頭央はMLBに行かなければ3000本安打を期待できたと思っている

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野球選手の「評価」は、最終的には「数字」である。先々週、私は石毛宏典さんに会った、1か月前には広澤克実さんにあった。お二人とも「2000本行きたかった」と言った。野球選手にとって最高の栄誉である「殿堂入り」も、数字が一番の根拠になる。

それを考えても、MLB挑戦には慎重であるべきだと思う。特に打者はピークダウンして帰ってくるのが間違いないのだから、よく考えるべきだと思う。



NOWAR


1982・83年松沼博久、全登板成績

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